第26章
[13]
朝を迎え、俺はミミロップ達を集め今後の指針を話した。パラセクト達の手で洞窟内ながら巧妙に隠し掘られていた横穴内のため、人間に横穴が見つからぬよう慎重に声を潜めてだ。
トキワの森方面に向かいたい。――ディグダの穴に最短距離で向かうためとは言ったが、本心はあの焼けてしまった森が三年たった今どうなっているのかを確かめたかったのだ。
パラセクトも加えて話し合った結果、あまり人通りがない朝方の今のうちにおつきみ山を出、三番道路を抜けてしまったほうが良いだろうという事だった。
それならば今すぐここを発たない理由は無い。各自、部屋に戻り、急いで荷物をまとめ始める。とは言っても俺のマントとムウマージの道具袋くらいしか荷物は無いわけだが。
マントの裾に付いた砂鉄や塵を払い落とし、止め具を両肩にしっかりぱちんと付けて羽織った。織り込まれた電気玉の欠片の影響もあるのかもしれないが、やはり自らの紋章――ドンカラスが勝手にデザインしたものだが――を背負うと気が引き締まるのを感じる。
三番道路側の出口へと全員集まり、パラセクトにおつきみ山の管理を改めて任せ、別れを告げた。
洞窟の外へ一歩踏み出す。早朝ということもあり、言われたとおり人間の影も気配も今のところ感じない。朝の清々しい空気と柔らかな日差しだけがそこにはあった。
「ちょっと待って――」
いざ出発と言う時に後ろから声をかけられ、振り返った。パラセクトが息を切らせながら洞窟からがしゃがしゃと出てくる。
「ふぅー……忘れるところだった、これを渡しとくよ。ピッピ達が残していく不思議な石さ。役に立つかはよくわからないけど……手ぶらで旅立たせるのも悪いからさ」
手渡されたのは淡い光を放つ不思議な石――昨日の踊りの最後に残されていったものと同じ石だ。岩を割って取り出したのだろうか。
パラセクトに礼を言い、俺達はおつきみ山を後にした。焼けたトキワの森は三年の歳月を経て、どのような姿になっているだろう――。
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