第26章
[01]
気を取り直し、ごつごつした山道を俺達は歩いていく。――ロゼリアが一番ダメージが深刻そうだ。トラウマとして刻まれた様々な忌まわしき記憶が溢れだしたのか、肩を少し落としげっそりしている。
しかし本当に荒れた地形だ。ポケモンですら少し苦労しながら進まなければならぬほどなのだ、人間が来ないと言い切れるのも頷ける。ミミロップがよじ登ろうと掴んだ岩が崩れて落ちかけたり、自らも転げ落ちそうになりながらそう思った。
これならば下の道を無理矢理、強行突破すれば良かったのではないかと少し後悔する。
必死に踏ん張り登る横を、のろまー、とけらけらわらいながらムウマージがふよふよと俺達を軽く追い越す。今はあの浮ついた体が非常に羨ましい。手と足の力を抜けば今すぐにでもなれそうだが、やはり遠慮しておく。
数回の起伏を突破し、何度目かの上り坂を少しずつ上がるにつれ、道の両側の岩しか見えなかった景色が徐々にあけてきた。
「ふう、とりあえずここで少し休憩するか」
ようやく坂を上りきると景色はすっかりとあけ、北を見れば大海原。南を見れば遠くにポケモンタワーらしきものとヤマブキシティの街並み。
そして西を見ればこれから目指そうとしているおつきみ山――? 少し上の部分が削れ、山が小さくなってしまっているような――。
「うわあ! すごい!」
アブソルの感嘆の声がすぐ背後から急に上がる。その声で先程まで抱いていた疑問が吹き飛んでしまった。
きょろきょろぐるぐると、すべてを目に焼き付けるようにアブソルは一面の景色を見回す。あまり動き回ると危ないですよー、というロゼリアの注意も聞かず、そわそわと忙しなく動き回っている。
ふ、と軽い笑いとともに息が漏れた。お前自身が創った世界だろうに。だが――確かにそれなりの眺めだ。今まで深く意識して景色など見たことは無かったな。
「どうだ、俺と共に来て良かっただろう?」
きゃっきゃとはしゃぐ背中に声をかける。アブソルは振り返り、満面の笑みで、うん! と答えた。
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