第25章


[06] 



「うわぁ!」
 暗闇の奥からロゼリアの悲鳴が聞こえる。――早速、来たか。
「な、何なんですか、あなたは? は、離してください!」
 暗くて先は見えんが、どうやら何者かにロゼリアが捕まっているようだ。
 やれやれ、また面倒臭いことになりそうだな。軽く舌打ちをして、洞窟の奥へと急ぐ。
 しばらく駆け進むと、暗闇の先に明かりが灯っている一帯があることに気が付いた。ロゼリアの悲鳴はそこから聞こえてくる。
 光は洞窟に掘られた部屋のような空間の入り口から、漏れだしているようだ。奥行があり、かなり広そうだ。
「うっふん、ダ・メ・よぉー。あなたみたいな、い・い・オ・ト・コをあたしが見逃すわけ無いじゃなぁい」
 部屋から何者かの声が聞こえる。その言葉遣いに対し、声は異常に野太い。
 俺は入り口の横の壁を背にし、俺は恐る恐る部屋の中を覗き込んでみた。
「ひいぃ、何なんですかこのポケモン!」
 ロゼリアが、太い筋肉の塊のような腕に、捕らえられている。アブソルとムウマージは、抱え上げられたロゼリアを困ったように見上げていた。
 身を少し乗り出し、更に部屋を覗き込むと、ロゼリアを掴んでいるのは巨大な人型のポケモンだということがわかった。
 巨人のようなそのポケモンは、全身を筋肉が鎧のように覆っていた。ぼこぼこと高く盛り上がった肩は、巨人の灰色の肌のせいで、まるで岩山が二つくっついているかのようだ
 ロゼリアを掴んでいる一本の腕の他に三本、腕が余っている。岩でさえ泥団子のように砕けそうな剛腕が、岩山のような両肩から二本ずつ生えているのだ。
 身を外に戻し、俺は心の底から深いため息が出る。……何だあの化け物は。
 どうやらトンネルは、三年のうちにあの筋肉の塊に乗っ取られてしまったらしい。イワーク達が巨人の後ろで、巨人の機嫌を伺うようにおどおどしていた。使えん奴らだ。



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