第25章


[02] 



「お前、どこか行く当てはあるのか?」
 俺がそう問うと、アブソルはぴたりと動きを止める。何かを考えているのかしばらく難しい顔をしていたが、すぐに途方に暮れたような表情を浮かべた。
「そういえば無いや。外の世界のことはよく知らないし、クレセリアもいないし……どうしよう」
 元気に上を向いていた尻尾を下に垂れ下げ、ぺたりとアブソルは草むらの上へ座り込む。
 まあ、そうだろうな。聞く必要も無かったか。
「ならば俺達と共に来い。旅を続けていれば、こんな場所など比べものにならない程、雄大で、圧倒されるような、素晴らしい景色に出会えるぞ」
「本当! いいの?」
 アブソルは再び目を輝かせ、尾を立て、飛び起きる。
「ああ、本当だとも。さあ、とりあえず奴らにお前のことを伝えに行くぞ」
「うん、ボク一緒に行くよ。ありがとう、ピカチュウ!」
 にっこりと笑いながら飛び付いてきたアブソルを、横に飛び退いて冷静にかわす。
 それにしても、ころころと表情がよく変わる。ダークライに閉じ込められていた時は、どこか影があったが、やはりまだ子どもなのだな。
 自然と口端が上に向かい、自分が薄く笑みをこぼしている事に気付く。……実に俺らしくない。
 表情をぐっと整え、少し後方へ離れさせていたミミロップ達の方へ、きびすを返した。



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