第25章


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 イワヤマトンネルを無事、カイリキーの魔の手から解放することが出来た。
 カイリキーは意識の無いうちに何重にも縄や蔓で緊縛し、捕縛。牢屋代わりに、使われていなかった横穴に放り込んで岩で入り口を塞ぎ、閉じ込めさせた。
 起きた途端に暴れだされてはかなわん。自由にするかどうかは目覚めてからの態度次第だ。

 イワーク達の今回の件に対する弁明や、三年の月日が流れる間に起こったこと、あれやこれやと話している内に随分と時間が経った。トンネルの出口から入り込んでいる外の光は紅に染まっている。
 心身ともに疲弊しているロゼリアの希望もあり、今日はイワヤマトンネルに部屋を用意させることになった。俺もミミロップ達の記憶とイワーク達の話に食い違いが出ないよう、辻褄合わせのフォローに孤軍奮闘させられ非常に疲れた。

 イワーク達が用意したそれなりの食事を終え、一人先に支度された自分の部屋へと向かう。松明の明かり灯る、少しづつ上へと向かう長い通路をぺたぺたと歩む。
 通路を抜けると、岩の壁へとたどり着いた。壁には三つ段差があり、まるで大きな飾り棚のような風貌になっている。段差ごとに幾つか横穴が開いているが、一番上の段は、入り口の両脇を、どこからくすねてきたのか豪華な美術品の彫像で固められた横穴一つだけだ。
 俺の部屋はその穴らしい。段の端に用意された、体格に合わない岩作りの階段を必死に上りきる。両脇に置かれた犬とも猫ともつかない不思議な生物の彫像に睨まれている気がしながら入り口をくぐった。
 部屋は洞窟の中とは思えないほど綺麗に掃除されており、埃一つ落ちてはいない。松明を灯していないのにうっすらと部屋は明るい。天井から月明かりが漏れだしている一帯があることに気が付いた。
 その下に行き見上げてみると、天井は丸く切り出され、硝子がはめ込まれていた。夜空には星が輝いている。
 急にあつらえられるものでは無い。この豪華絢爛さから、元々ここはカイリキーが自分のために作らせた部屋なのだろう。所々に飾られた装飾品の悪趣味さからもそれがうかがえる。
 だが、あの天窓は中々の物だ。布団代わりに部屋の隅に敷かれていた良い匂いのする藁を、天窓の下へと持っていき寝転んだ。
 今日はいつにも増して星空が綺麗だ。星々が川のように集い、輝いて見える。眺めている内に……徐々に眠りへと誘われ……――。



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