第23章


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 四角い部屋の中央で、部屋の角から伸びる八本の長い鎖に四足の白い獣が捕われている。
 その白い獣の体は全体的に白い毛並みに覆われているが、顔面と額の縦長に丸い模様と湾曲した幅広の剣のような尾は黒く染まっていた。
右の側頭部からは黒く鋭い鎌状の角が伸び、左は白い毛が髪の毛のように伸びていて左の側頭部を守っている。
 白い獣は不様に転び情けなく立ち上がった俺を、赤い瞳で見つめながらくすくす笑っていた。
 腕輪が白い獣に大きく反応を示し強く輝く。この獣が神の――アルセウスの転生した姿――。
 俺は白い獣にゆっくり歩み寄る。
「……ようやくまた会えたな――アルセウス」
「え? 君と会うのは初めてのはずだけど。それにアル――セウス? って……何?」
 きょとんとした顔で白い獣は話す。ふざけてとぼけている風には見えない。
 おかしい。腕輪の反応、この厳重な封印、この獣だと思うのだが。

「お前はアルセウスでは無いのか?」
「うーん、よくわからないや。生まれてからボクは一度もここから出たことはないし、話し相手として創ったクレセリアにも主としか呼ばれなかったし……」
「つくった?」
「うん、ここに一緒に閉じ込められていた温かい光を集めて念じたんだ。黒い嫌な奴にクレセリアはもうどこかに連れていかれて、ボクはこの通り鎖に繋がれて何もできなくなっちゃったけど」
 あどけない子供のような口調からは威厳は感じられない。


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