第21章


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「こんな時に何でえ、あの出っ歯……」
ビッパに呼ばれ、苛々した様子でエントランスホールへドンカラスは向かう。

エントランスホールの一階ではビッパがおかしな植物ポケモンらしい物体を連れていた。
その物体は体が花びらのようなものに包まれていて、まるで花の蕾のようだ。
「あ、ドン!また僕の友達連れて来たんだお」
手摺りに掴まり二階の方から見下ろしているドンカラスに気付き、ビッパが一階から手を振り叫ぶ。
「何でぇ――そいつら」
わしわしと頭の帽子みたいな羽毛をいじりながら、面倒臭そうにドンカラスが尋ねる。いつもの光景だ。
「チェリムく――」
「で?」
さっさと切り上げて追い返そうとするドンカラス。最早ビッパの連れてくるポケモンに全く期待はしていない。
花見が中止になり機嫌が悪いこともあり、あからさまに投げやりな態度だ。
「何だかいつも以上に冷たいお……。チェリム君は花が開くと桜みたいに綺麗なんだお」
ドンカラスが眉の辺りをぴくりと動かす。
「――何? 桜だと?」
「そうだお。でも――」
これは使える――ドンカラスは目の色を変えた。パチンと羽を鳴らしてヤミカラス達を呼び出す。
洋館のそこら中からヤミカラス達が羽音をたて、エントランスホールに集まって来た。ゴホン、と咳払いをするドンカラス。
「クカカ、てめぇら!花見だ、宴会の準備を始めろ」
「へ?人間のせいで中止になったんじゃあ?」
ヤミカラス達は疑問の声を上げる。
「“代わり”が届いたんでえ。さっさと始めなせぇ」
「へ、へ〜い!」

「最後まで話を聞いてほしいお……」
ビッパを無視し準備は進む――



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