〜第1章〜


[03]サヨナラ


「すいません。お客さんもぅ…閉店なんで…また…」

「少し見せてくれ。噂には聞いている。」

男は、カツカツと音を立て周りをキョロキョロしながら歩き始めた。

「オーナー…迷惑な客だなぁ。」
一端隠れていた289が顔を出しオーナーに耳打ちする。

「!!」

男と目があった。

男の眼は、獲物をみつけたように289の方に歩いて来る。

「わっ!」
289は、再び隠れようとしたが男は、手首を掴んだ。

「ナンバー289…間違いない。見つけたよ。」
くすっと不適な笑みを浮かべる。

「お客さんもう。今日は閉店!!」
オーナーが叫ぶ。
「いくらだ?そのNo.289」
ボソッと男が呟く。

「こいつは…」
喋りかけたオーナーの口を289が塞ぎ…
「俺は、500ルーツだ。」男は、顔色一つ変えずに…。
「そぅか…。」

『悠!ゼロ一つ多いだろが!』
オーナーが小声で言う。
「わかってるょ。わざとだょ。あんなすかしたやろう俺は絶対イヤだね。それにこんな額だせるわけねぇし。」


男は、鞄をオーナーの目の前に突出す。

「丁度500ルーツだ。」

オーナーと289は、中を確認する。今まで目の前にこんなたくさんのお札を目にした事があっただろうか。

「これで俺のもんだね。頂いて行くよ。」
男は、289に手を差出した。


「待ってくれ!今日ゎもう閉店だ!明日に…」

「オーナー…俺行くよ。今までありがと。アリスによろしくな。」

今まで何人ものお客さんの元に買われてもサヨナラを言った事は、なかった。でも今回は、いつもと違う気が2人ともしていた。

「ハルカァァ!」
オーナーが名前を呼ぶ…。震える声で。
289もうつ向く
男が289の頭の上に手を置く。
「どうやら2人は、只の売手と商品という訳ではなさそうですね。見えない何かが見える。…安心してください。アタシは、289を奴隷のように扱うつもりはありません。またいつでも店に来れるようにしますんで。」

予想外の言葉だった…。

「俺はNo.289です。よろしくおねがいします。」

「行こうか?」

「はぃ……。」

289は、男と店を出た。
「ありがとうござぃました!」
オーナーが大きな声で叫んでいた。
その大きな声は、いつまでも289の耳に残っていた。

こうして289ゎ1人の男性のモノになった。

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