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《完結》負けない!!負け犬【１】～２０代後半・真選組女子隊長の日記～

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[17]１月２日

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正月三が日は初詣客に加え、初売りの福袋狙いのお客が街へ繰り出して来る。

地方からやって来る人も多く、いつもに増して江戸が賑やかになる。

それは良い事なのだが、人口密度が増えると…

◎人々イラつく
↓
◎些細な事で喧嘩おっ始める
↓
◎真選組が御用。

という図式が出来上がる。
だから普段よりも市中見廻りの回数を増やさなければならないのだ。

例年なら私も今頃は四越デパートの玄関前で列に並び、開店と同時に猛ダッシュし、髪振り乱してブランド福袋を購入していた事だろう。

でも今はそれらの人を安全に導く為に見廻る身。

今年から私の正月の過ごし方は１８０度変わった。

・―・―・―・―・―・

夕方、本日三度目の市中見廻りに出掛ける。

腰には昨日松平氏から与えられた【百華】を携えて…。

まだ世間には真選組女子隊設置は知らされていない。
正月明けに大々的に発表し、隊士募集を掛けるのだという。

だから街の人々は女の私が隊服に刀を差して歩いている姿を見て、

｢何で女の人が真選組の服着てんの？｣

｢ニューハーフ？｣

｢コスプレ？｣

と好き勝手に囁き合っている。

ああぁ～早く募集を掛けて、民衆の誤解を解きたいいぃ…。

｢どこ見てやがんだ、こんちくしょうめ！！｣

｢あんらとコナーロー、俺をなめれんろかぁ～％＊￥☆＃…｣

正月によくあるベタな光景、酔っぱらいとチンピラのつまんない事から勃発する喧嘩。

年末・年始でこのテの問題をいくつ解決しただろうか。

｢またか｣の溜め息混じりに人垣を掻き分け、喧嘩の仲裁に入る。

｢ハイハイどうしたの？
ここは公道よ。
お正月くらい穏やかに

……！？｣

こいつ、酒臭くない。

酒で酔っぱらってるんじゃない。

…クスリだ！！

感付いた時には、そいつの手に短刀が握られていた。

さすがのチンピラも刃物にビビって、足がすくんで逃げられなくなっている。

薬物使用者はブンブンと短刀を振り回し、意味の無い言葉を叫び、周囲の人々にも影響を及ぼし始めた。

早く何とかしないと！！

しかし得意の拳で押さえ込もうにも、相手が刃物を所持しているのではこっちにも危険が生じる。

ここはやはり【百華】のお出ましか…

腰の相棒に手を掛け、ﾗﾃﾞﾝ模様の鞘からその身を抜き出す。

｢…真選組だ。大人しくなさい。
さもないと、正月早々病院送りになるわよ！！｣

そう威嚇しながらも、初めての真剣での仕事に手の震えが止まらない。

｢なんでぇ～い、あんた女かぃ。
手が震えてるじゃんよぅ。
俺っちが怖いってか？
ウヒャヒャヒャヒャ…｣

どうしよう

斬るなら
移動手段を奪う為に脚か、
それとも刃物を持つ手か…

いずれにしろ自分の剣が震えで定まらない。

助けて、誰か助けて…！！

｢コラコラ、

お兄ちゃんもお姉ちゃんも物騒なモン振り回してんじゃな～い…

…よっと！！｣

｢ぐがあぁっっ！！｣

木刀で腹とうなじを殴られた薬物男は、あっけなく倒れ込んだ。

木刀の主は

坂田銀時

彼だった。

・―・―・―・―・―・

夜の市中見廻りの時間になった。

しかし先程の件のショックが私を支配し、情けなさで行く気になんかなれない。

竹刀と真剣の持つ意味の違いをまざまざと見せつけられたような、重苦しい感情が頭をもたげる。

民間人に助けられるなんて…

しかもそれが銀時だなんて…

｢うぉ～い、華蓮いるかぁ？｣

廊下から声がする。

襖を開いてタバコ臭い声の主を招き入れる。

｢お前、夕飯食ってねぇだろ。
食堂のババァが心配してたぞ。
食欲無ぇのか？
そんな時にゃマヨネーズ食っとけ。
マヨに限るぞ、マヨに。｣

この間｢部屋に灰皿くらい用意しとけ、ボケ！！｣とこの人に叱られたので、百円ショップで買って来た。

それを黙って差し出す。

灰で私の部屋の畳に穴が空いたらヤダもん。

真新しいガラスの灰皿に灰を落としながら、マヨラーの土方さんがまた話し始める。

｢…お前、刀持って固まって、事もあろうに民間人に助けられたんだってな。｣

｢…｣

｢さっき取調室で薬物中毒の男から聞いたよ。

本っっっ当、情けねぇのな。｣

そんなの、当時者が一番感じている事ですよ。

｢でも、あんたにとっちゃ良い経験だったんじゃねぇの？

竹刀から真剣に持ち替えた時にゃやっぱビビるもんだからな、みんな。

だからこれからは道場でも竹刀ヤメて真剣振るこったな。

【百華】はこれからお前と人生を共にする相棒だ。

お前がそいつを振りこなせないでどうすんだよ。

一日も早く身体の一部になるくらいに馴染ませろ。

いいな。｣

厳しい言葉が私を焚き付ける。

今すぐ道場に行こう。

そう思った時には【百華】を手にしていた。

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