第一章


[07]パパ


「はいぃ〜…行ってきますぅ〜」
ぶぅーと口を尖らせながらうらめしげに一を見上げる


『一姉さんに憧れちゃうよ、もう…』
と言いながら由斗は浴衣を羽織り、一のあとをついて部屋を出る


「私はもう神殿にでなければなりませんから一人で行ってらっしゃい
朝ご飯は座卓の上ですからね
学校に遅れないようにするのよ」



一はそう言って先に行ってしまった


途中までは方向が同じなのだから、一緒に行けばいいのにーと思いながら部屋の襖を閉める




「パパ、何の用なのかなぁ…?」
桜色の唇に人差し指をあててぶつぶつと呟きながら、
寝巻きの浴衣姿で歩いてゆく由斗の姿は、面倒くさいなオーラを出しつつも、どこか嬉し(?)そうにしている



『パパ大好き〜』なのだから、当然といえば当然なのだが


神殿を少し行ったところの廊下を歩いて行くと、つきあたりに由斗の父、柴吉達の部屋がある


吉達は一の実の父親で由斗とは血が繋がっていない
だが、もの心ついた時にはすでに吉達のことをパパと呼んで慕っていた


だから今、本当の父親が現れたとしても、自分が選ぶのはパパに決まっている!…と思う…。のだった。


生みの親より育ての親ということなのか…。


ママは由斗が五歳の時に亡くなってしまっているので、今は実質由斗、パパ、一の三人暮しだ。

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