バイバイ(更新中)


[05]焦


カクカクと腰を振る俺は貴女の目に滑稽なものとして映ったことだろう。そのことを証明するかのように、クスクスと笑い声が耳を擽る。


「今日は特別だから…ね」


淫靡な声で囁くと、指と息の感触が離れた。
視界をアイマスクで覆われているから、これから起こることが予測できない。
恐怖にも似た焦燥感が、俺を苛む…


クチュクチュ、と淫靡な水音がしてきた。


「さ…くらこさん?」
「…ん……ぁっ、ぁあ…」


不安になって呼びかけた俺の声に、答えてくれることはなかった。その代わりに、淫靡な水音と艶やかな喘ぎ声が空間を支配する…


クチュクチュ…


「……はぁっ、ん!…んぁぁ」


甘ったるい声が耳朶を擽って、焦燥感を煽り立てる。我慢なんてできそうにないのに…
今すぐ、貴女の熱い粘膜を味わいたいのに…



俺にできるのは、四肢を拘束する鎖を僅かに引っ張って耳障りな金属音を響かせることだけだ。


「ぁん、も…、慌てないで」


たしなめるような口調で貴女は囁く。その間も、水音が空間に響き渡る…


「桜子さぁん………はぁっ!」


弱々しい声で貴女を呼ぶと、『待て』とでも言うように、ペニスを撫でる。
それだけでピクンと浅ましい反応をしてしまう。
どうしようもなく恥ずかしくて、そして…それ以上に悔しい。

別に被虐に興奮する性癖を持ち合わせてはいない。
女に組み敷かれるより、女を組み敷いて思いのままに啼かせるほうが好きだ。

それなのに…
自由にならない鎖で拘束されたこの体…
俺の意思で快感を貪ることは、一切許されない。


突然、ぬるりとした感触がペニスを襲った。粘度のたかい液体をまとった細い指が絡められた。
その液体のおかげか指のすべりが先程より数段なめらかになって、激しい動きで俺を追い詰める。


「…私を忘れられなくしてあげるわ」


悲しさをにじませた声で貴女は言った。

直後に感じるありえない場所を這う、細い指…


他人に触れられたことのない場所に狙いを定めて、指は緩やかに円を描いた…




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