バイバイ(更新中)


[03]囚


特別…ね。


切ない声音が耳の中で何度も繰り返される。
何が特別だと言うのか…

俺にとってはこの行為そのものが非日常で、特別だ。
貴女にとっては、今までのことは日常だったとでも…?
いつも、こういうことを繰り返しているのか?


あんなにも美しい貴女が…?



俺も、ゆきずりの一人ということ…か……



勝手にたどり着いた答えに、心は黒い血を流す。
苦しみに似た黒い悲しみが俺の心を染め上げる。


それは、狂気にも似た感情だった……




それから開放してくれたのは…涼やかな貴女の声。


「ごめんね。待ちくたびれちゃった?」
「いえ…考え事をしてたから、大丈夫」

シャワーの音が止まったことにさえ気づけないほど、考えることに没頭していた。
こんなことは、初めてだ。

貴女との逢瀬の時間は貴重で奇妙で、貴女以外のものに囚われることなどなかったのに…


「何を考えていたのかしら?」
「桜子さんのことですよ」


冗談めかして言ってみる。あながち嘘でもなかった。被害妄想に近い考えではあったが…

貴女は俺の答えを気に留めた様子は全くない。
興味そのものが、無いのかもしれない…


「本当かしら?」


くすくすと笑いを含んだその声はどこか棒読みで、貴女の感情はけして表に出てこない。
いつものことだ。

でも、それが腹立たしくて悲しい。
貴女の感情はどこにある?


俺に、それを見せろよ…
受け止めてみせるから。


「どっちでもいいわ。すぐにわかるから」


空気が澱んで、淫靡なものへと変化した。


それは、始まりの合図…




貴女は、いきなり俺のペニスを掴んだ…


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