バイバイ(更新中)


[02]売


「今日で最後ね」

いつも通りの妖艶な微笑を浮かべると貴女は、吐息と供に言葉を吐き出す。
あまりにも簡単に紡がれる言葉に、少なくない衝撃を受ける。


「お金は振り込んでおいたから」
「…ありがとうございます」


ドライすぎる言葉は繊細すぎる俺の心を、容赦なく切り刻む。
この切ない痛みを感じるのも今回で終わりだ。
もう次はない。

この関係は今回で終わり。
貴女が俺を弄ぶのは、今回限りだ。




貴女が主導権を握るのも最後だ。


「シャワー浴びてきます」


いつものように淡々とした声で告げ、豪奢なバスルームへ向かう。

貴女好みの香りのするボディソープで体を洗う。
いつの間にか、この匂いだけで勃つようになってしまった。


貴女の調教はすばらしいとしか言いようがない…
とても屈辱的ではあるけど…

「んふ…いいにおいね」


貴女は悪女の顔に変わって、妖艶に微笑む。
西洋の淫魔、サキュバスとはこんな感じなのかもしれない…


「匂いだけで勃っちゃうんだ?イケナイ子」
「桜子さんのせいですよ…」
「んまぁ…生意気ね」

「あうっ!」


楽しそうに言うと、貴女は僕のペニスを軽くはじいた。
途端に襲ってくる快感…


「ココはかわいいのに」
「…あんまり嬉しくないですよ、それ」
「だって、正直じゃない?素直な子って好きよ、私」
「てっきり、大きさのことかと…」
「下世話ね。ま、いいわ。私もシャワーを浴びてくる」


クスクスと笑いながら、貴女は僕を手招きする。
反対の手には、俺を快楽の地獄へと誘う皮の手錠…


俺は手招きに従って、ゆったりとした歩調でベッドに歩み寄る。
仰向けに寝ると、手足を拘束され、アイマスクが施される。


「アイマスク?」
「今日は特別…ね」


何も見えない暗闇の中、聞いたことのないような切ない声がした。


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