黒猫の君と白猫の僕(君と私番外編/完結)


[07]道場1


―――――――――――――――――――――――――

その日は気が重かったのを覚えている。
祖父が怖くて仕方がなかったあの頃に、一人で謝りに行くなんて…

恐怖そのものだった。

それでも、拾った白猫のために勇気を振り絞って行ったんだ…
恐怖の祖父の道場へ…

―――――――――――――――――――――――――

学校が終わって、そのまま道場へ向かった。
お父さんとの約束を守るために、おじいちゃんに謝らないといけないから…

道場の中には、おじいちゃん以外誰もいなかった。
いつもは掃除をするんだけど、今日は違った。
まっすぐにおじいちゃんの方へ向かうと、ぺこりと頭を下げた。

「おじいちゃん…、昨日はごめんなさい」
「正座をするのは、嫌か?…組み手に参加できないのは、嫌か?」

「…僕……」

嫌だとは、どうしても言えなかった…
もう怒っているおじいちゃんを、これ以上怒らせたくはなかった。

「智…、組み手をとるには、まず心を鍛えないといけない。乱れた気持ちで、組み手を取ってはいけないんだ」
「…?おじいちゃん、よくわからないよ…」

首をかしげた僕の頭を、おじいちゃんは優しくなでた。そして、少し柔らかい表情を浮かべた。

「智、正座をさせるのはどうしてだかわかるか?」
「ううん。わからない…」

首を横に振る僕を見て、おじいちゃんは大きなため息をついた。
怒ってるような感じじゃないけど…、なんだか変な感じ…
あきれてる…のかな?



[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.