黒猫の君と白猫の僕(君と私番外編/完結)


[10]動物病院にて


動物病院に着くと、待合室は人と動物でいっぱいだった。
お父さんと受付を済ませて、その隅っこに二人で立って待った。
待合室にはいろんな動物の鳴き声が響いていた…
いろんな人がいて、いろんな動物がいた。


順番に人が呼ばれて、診察室の中へ入っていく…
箱の中では、子猫がカサカサと動いて、元気に泣いていた。


「姫野さーん、姫野 ねこさーん」

受付の人が僕らのことを呼んでくれた。
なんか、変な呼び方でびっくりした。
お父さんも、僕の横でびっくりして顔を赤くしていた。

後でわかったんだけど、動物病院では飼っている動物の名前で呼ぶんだ。
お父さんは、名前が決まってなかったから「ねこ」って書いちゃったんだって…




診察室の中には、よくわからない機械や道具と白衣を着た獣医さん…
人間の病院と同じで、独特の雰囲気と匂いがあった。


「今日は、どうしました?」


箱から診察台の上に子猫を移動させると、獣医さんは優しい声で訊いた。
訊きながら子猫を撫でながら診察している。


「健康診断と飼い方を教えていただきたいんです。あと、性別も判断がつかなくて…」
「ああ、健康上の問題は見当たりませんね。目も耳もお尻もきれいですし…、元気ですね。ダニ・蚤も大丈夫そうです。こちらは一応、処置しておきますね」


獣医さんは手早く診察しながら、子猫の首の後ろに薬を数滴落とした。


「はい、ダニ・蚤の駆除は終わりです。この子の世話をするのは君かな?」
「う…はい」
「この子は女の子だから、かわいい名前を付けてあげて。その名前を呼んで、きちんと面倒を見てね」


獣医さんはにっこり笑ってそう言うと、お父さんと僕に猫のお世話の仕方や必要な注射や手術の話なんかをしてくれた。
そして、それをまとめた小さな本をくれた。


「お兄ちゃーん。ご飯できたよー」


カランという音がして、元気な声がした。
そして、診察室に…




昨日、会った子が入ってきた。

スカートを履いて…


昨日見たズボン姿とは違って、かわいく見えた。


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