ジュリエットな君とロミオな私 (君と私@)(完結)


[09]最終幕


第2幕の最後、暗転になるあの…初夜のシーン。
上下は逆になってるけど…ある意味、正しい図…

「まこちゃん。何が…リアルか教えてあげるね」
極上の笑みを浮かべて呟くと、姫野君は私の頬をそっとなでた。
そんな些細な刺激にも、体は敏感に反応して小さく痙攣する…
痙攣は甘い痺れに変換され、私の脳を侵食していく。

ダメ…やっぱり、抵抗できない。
体を動かそうとは思うんだけど、力が入らない。指が触れるたびに、自分の意思に反して体は小さな痙攣を繰り返す。

「…ん、っはぁ…んぅ…や、嫌ぁ…っく……ひ…っんく」
「嫌って…もう、遅いよ。まこちゃん…もう、止められないよ」
熱に浮かされたような、低く掠れた声は、私の耳朶をくすぐって、理性を奪う。

ちゅ…ぴちゃ…ちゅっ
湿った音を立てながら、耳を舐められ、吸い付かれる。背筋をゾクゾクとしたなにかが、また駆け上がる。
「ひゃぁっ…、や、止め…て…もう、やぁ…っぁあ…ん」
「無理だよ。まこちゃん、かわいすぎ…泣いてる顔もいいね」

どこかうっとりとした表情で、姫野君は私の首筋を撫で、鎖骨の周辺に舌を這わせる。もう片方の手で、夏服のブラウスのボタンに手を掛け、一つ一つ丁寧に外される。

「ん…っ嫌。止めっ…やぁっ」
すっかりはだけたブラウスの隙間から、するりと手が進入してきた。そのまま、ブラ越しに撫でさすられる。

「イヤァ!…やっ…おね…が…い…っく…もう、止…めて…ひ…ぃっく」
胸を触られたことが、あまりにもショックで気がつけば、嗚咽交じりの悲鳴を上げていた。
その悲鳴を聞いた、姫野君の体がぎくりと強張って、胸の上の手の動きも止まった。
その隙に、顔を両手で覆って横を向く…
もう、こんな顔を見られたくはなかった。涙でぐちゃぐちゃになった赤い顔…


「…っく、姫野君の…ばかぁ…。酷い…よっ…ひっく。順番とか…あるでしょ?」
急展開についていけない頭は、意味を成さない言葉を紡ぐように指示を出す。嗚咽交じりの声は細くて、私らしくなかった。

「…まこちゃん…?」
「…やり直し」
「は?…なにをやり直すの?」
「全部」
嗚咽は治まったけど、混乱してるのはそのままだった。自分が何を言ってるかわからなかった。
ただ、自分でもよくわからない感情が渦巻いている。怒りとか悲しみとか、そんな負の感情ではない何か…
その感情が、膨らんで言葉になる。
自分では制御できない、心の叫びなのかも知れなかった。
それをわかって欲しくて、両手を胸の前まで下ろして、濡れた瞳で姫野君をみつめた。

「最初から、全部…やり直して?」
「まこちゃん…最初からって?」
困り果てた表情をした姫野君がいた。叱られた子犬のようにしょんぼりした顔はかわいくて、思わず抱きついていた。
両腕を彼の首に巻きつけて、耳元で囁く。

「好きって言ってくれるところから、やり直して?」
耳を噛むように、囁いた。表情はわからないけど、体はピクリと反応した。



「まこちゃん、好きだよ。僕と付き合ってくれる?」
乱れた制服のまま、私はこくりと頷いた。
頷いた直後、背中にそっと腕が回された。

「キスはね、もっと、ムードがあるところでしたかったな」
「…どんな?」
「夕焼けの帰り道…」

THE END


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