ジュリエットな君とロミオな私 (君と私@)(完結)


[04]本当の幕開け


姫野君に手を引かれて向かったのは、着替え用の教室。
彼はもちろん男の子用のスペースへ、私は女子用のスペースで着替える。

スカートの制服に足を通すのは…気が引ける。
だって、制服は似合わないから…

上に伸びすぎた身長、ささやか過ぎるふくらみ、低い声…
どれをとっても女の子らしくない。
なんで、174pもあるんだろ。
なんで、Aカップなんだろ。
なんで、かわいい声が出ないんだろ。

考えれば考えるほど、むなしい。
制服を着ると、女なんだと思い知らされる。
女らしくない女…

こんな外見だったら、こんな声だったら…
男に生まれたらよかったのに。

女の子っぽい外見の姫野君も、こんな風に思うのかな。
彼も、女に生まれたらよかったのに…って、考えたことがあるんだろうか…?


「まこちゃ〜ん。着替え終わった?」


「終わったよ〜」
なんで、同時に着替えてるのかわからないし…
ってか、なんで待ってるの、姫野君…?

カーテンを開けて、着替えスペースから出ると、制服姿の姫野君がいた。
かわいいけど、きちんと男の子に見える…
中性的な顔だけど、男の子だってちゃんとわかった。

「いいな」
ポツリと呟いた声は、自分にしか聞こえないほど小さくて、か細かった…


かわいいのにちゃんと男の子に見えるって…なんかずるい。
私なんか…女の子に見えないのに…見てもらえないのに…

「いいって、なにが?」

地獄耳ですか、姫野君?
あんな情けない声を聞かれてたなんて・・・なんか、恥ずかしい。

「ん〜?なんかね。姫野君はきちんと男の子してていいなって…なんとなくだよ」
笑ってごまかしながら答えてみた。
正直に話してしまったのは、なんでだろう。
別に、ごまかしてもよかったのに…

「きちんとって…僕、男だし。今はまこちゃんより小さいけど、すぐに抜いちゃうよ。成長期だからね」
整った顔には似合わない不適な笑顔を浮かべる姫野君は…
なんだか男くさかった。

こんな表情をするんだ。
入学してからの5ヶ月間、名前すら覚えようとしてなかった同じクラスの男の子が、なんだか身近に感じられた瞬間だった。

「ねぇ、まこちゃん。共演のよしみで、文化祭、一緒にまわらない?」
にっこり満面の笑みで誘われた。

「なんで、私なの?」

「なんでって…僕がまこちゃんとまわりたいからだよ」
思わず口に乗せてしまった疑問には、すぐに答えが返ってきた。
でも、その答えは納得できるものじゃなくて…
私には、信じがたい内容で…
正直…困った。


「他の子とまわる予定ないの?姫野君、人気者じゃない…」
普通の女の子から見れば、姫野君って極上物件じゃないのかな?
たくさんの子が、彼を誘うんじゃないの?誘いたいって思うんじゃないの?

姫野君は、顔が整ってるし、背丈だって特別低いわけじゃない。
私より、低いってだけで…
・・・あ、また自己嫌悪。
なんで、背丈にこだわってるんだろ…

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