ジュリエットな君とロミオな私 (君と私@)(完結)


[01]第1幕


高校で初めての文化祭。
うちのクラスは劇をすることになってしまった。
それもベタにロミオとジュリエット…

一番票が多かった喫茶店は、くじで場所が確保できずにできなくなってしまった。1年だから、優先的に場所はもらえないんだよね…
そんなわけで、2番目に票が多かった劇をやることになった。
それも、男女入れ替わりの劇。
票が多かったって3票しか入ってなかったのに…


誰だ、入れたの…


私は…
日頃の行いが悪かったのか、裏方という希望は通らずになぜかロミオ役。
劇の経験なんかほとんどないのに…


しかも、相手役のジュリエットは本当にかわいい美少女そのものの男の子…
私なんか、負けちゃってる…
女として、すごく…ものすごーくへこんでしまう。

名前は…なんだっけ?
姫野君だったかな?

名前まで可憐だ…






「ねぇ、まこちゃ〜ん。衣装の着付けするって〜。こっちに来て〜」
甘ったるいアルトの声が私を呼ぶ。
真琴―まこと―だなんて、響きだけなら男みたいだ…

「あいよ〜。すぐ行くから、待ってて〜」
返事をして、自分の声の低さに悲しくなってくる。
声だけ聞けば、男か女かわからない。

容姿を見れば100パーセント男って思われるんだろうな。

かわいいなんて言われたことが無い。
いつも言われるのはカッコイイという言葉。
私に手紙をくれるのは女の子。

背が高いのも声が低いのも好きじゃない。
本当は女の子らしくなりたかった。
でも、気がつけば背が高くなって男の子より目線が上だった。
バスケを始めたのも、背が高いことを気にしたくないから。
今は、バスケをやりながら背が高くて良かったって思えることもあるけど…



最近はまた気になりだした。

だって、横には私の理想を絵に描いたような可憐なジュリエットがいる。
細い顎、きれいな目、薔薇色の小ぶりな唇、それに無敵の華奢な手足…
思わず守ってあげたくなるような印象を与えるジュリエット。

それは、ロミオである私の理想の女の子。
なりたくてもなれなかった姿。


刺激されるコンプレックス。
だんだんと自分がいやになってくる…


はぁっ…



心の中でため息を吐いて、“カッコイイ”ロミオになりきって衣装の前へと歩く。


ユウウツ。



私の目の前には、薄いピンクのドレスに身を包んだジュリエット。
「ジュリエットになりきってるね。ドレスよく似合うね。かわいい。……って男の子には失礼だよね。ごめん…」
思わず出てくる褒め言葉。
本当にかわいい。本人が嬉しいかはわかんないけど…

「まこちゃんも着てみる?きっと、似合うと思うよ〜」
悪気の無い、ただただ無邪気な声に唖然とした。
私のどこを見ればそういう風に思えるのか聞いてみたかった…けど、本気にしてるとは思われたくなかったから代わりに憎まれ口を叩いてみる。
「無理だよ。姫野君みたいにかわいくないし」
どこか怒ってるように響く低い声。
しまったとは思ったけど、言葉は口にもどっては来ない。
姫野君の表情もこわばってしまった…

あーあ…
私って、かわいげないなぁ。

「まこちゃん、ごめんね?」
上目遣いで謝ってくる姫野君は…
やっぱりかわいかった。

それに比べて私は…

「まーこーとー!姫ちゃんをいじめないの。もうすぐ出番だから二人とも舞台に行った、行った」
衣装兼裏方である親友の美沙の一言で、私たちのなんとなく気まずい雰囲気は払拭された。
そして追いやられるように舞台そでへ向かった。


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