本編「〓Taboo〓〜タブー〜」@


[19]chapter:5-3


ザンッ
 
刻みのよい音とともに紅い鮮血が月夜を舞った。
 
──速い…!
 
今までからは考えられない動きをして、ヴァンはシンの肩を斬りつけた。
 
「カハッ..カハッ!カハハハハハハハ…!!」
 
ヴァンは奇声を上げながら後ろへと跳んだ。
「ほら!ほら!」
「な...!」
ヴァンは目にも止まらぬ速さでシンとの間合いを詰めた。
「こっ..の!」
シンは自分の所へ向かうヴァンの顔へと左腕を振り下ろした。
「遅..」
ガッ!!
「なに!?」
ヴァンは右足でシンの左腕を蹴り上げ、阻止した。そして間髪をいれず右手に持った剣で、シンの腰から右肩までにかけて切り裂いた。
「ぐぁあ!?」
そのまま振り上げた剣を再び下へと薙いだ。
血がヴァンの白髪を紅へと染めていく。
ヴァンは再び後ろへと跳んだ。
 
「そ..そんな...!この俺がまったく動きについていけないなんて...!」
シンは体中から血を吹きながらうろたえた。
 
その横で見ていたラルも驚きを隠せない。
「これが..ヴァンくんなのか...?」
 
ヴァンは剣を垂直に振り上げて構えた。
「ねぇ..もう終わり?」
「こ..の..クソガキがァァアァ...」
シンは怒りに震えた。
 
「グルルルルル!!!」
シュバイツがヴァンの後ろから飛びかかった。
ガチン!という音ともにシュバイツの口が閉じる。
「なにしてんの君?」
「ガル!?」
 
ヴァンはいつの間にか急襲を避け、シュバイツの頭の上へと乗っていた。
ヴァンはシュバイツの背中を切り裂いた。
「ガリュゥァァアァ!!!」
怪物の断末魔が森に響く。
 
怪奇を思わせる奇声。人間とは思えない俊敏な動き。血で染まった紅い髪。
もうそこにいるヴァンには、今までの臆病なヴァンの姿はまったくなかった。
 
「ハァ..ハァ...そんな..こんな..こんなことが...あ..あってたまるかァァアァアァァァアアァァ!!!」
 
シンが唸ると同時に森の木々が揺れ、地面が震えた。
「く..!左腕だけとはいえ...『悪魔』との契約の力がここまで...!」
ラルはうろたえた。
 
「ハァ..ハァ...殺してやるぞ...ヴァン!!」
 
ヴァンはニヤッと笑みを浮かべた。
 
 
 
──どうなってんの...?体が勝手に.....!
 
血の暖かさが皮膚を通して生々しく伝わる。シンの怒りが眼(まなこ)を通して直に見える。

なのに──

動けない。
 
体が信じられない動きをする。出したこともない奇声を勝手に発する。
 
僕はどうなっている!?
 
そして...僕の中にいる...君は誰だ...?
 
 
 
 
「終わりするぞ、ヴァン!!」
「ケケケケケ...」
 
──また笑う...
 
ヴァンの意に反し、体は剣を横に構え出した。
シンは悪魔の左腕がパンパンに膨らむほど力を込めた。
「お前ごときに...つまずいてるわけにはいかないんだぁぁぁぁぁ!!!」
 
シンが走りだすと同時に大地の揺れが止まった。
ヴァンもシンに向かって走り出した。
 
息ができないほどの緊迫した空気が、辺りを埋める。
シンは左腕を、ヴァンは剣を前に突き出す。
 
 
──最後はお前に斬らしてやるよ
 
──え……?
 
 
今夜何度目か分からない鮮血が宙を舞った。
肉を裂く感触が、手を通して脳に伝わる。
 
神経が戻っていく、そんな感じが...した。
 
 
chapter:5 呼ばれた狂喜
 
 
〜to be continued...

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