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[03]無題




「なんだったんだろ…」


─店員とお客に謝罪してから店を出て

今は公園のベンチにいる。


「ほんと びっくりした」



ウチが一人で喋っていると、



「先輩先輩ってさ」


「?」


有岡さんが話だした。


「先輩先輩って、苗字さんのこと好きなんだって。」


「…え」


「だから、多分 さっきも怒ったんだと思う。」


「………」

「それに、さっきは苗字がいなかったら何されてたか分かんない。」


「……」


「情けないよな、 男が女に助けられて…」


「んな……、そんなことないよ。」


「え?」


「元はと言えば、ウチがお金崩したくないとかワガママ言ったのが悪いんだし……。それに有岡さんは何もしてないし……だから」


「………」


「またお互い様ってことで、」



有岡さんが険しい顔をしていたのと、このしんみりした空気のせいか

ウチの声は最後のほうは余りにも小さくて。


「苗字さん?」


「あ、その…だから有岡さん悪くないよ…」


「……ごめん」


「ぇ?」




有岡さんが謝ると同時にフワと風が吹き、

そして…



「ん…」



口に変な感触がした。



瞬間的に閉じてしまった目を開くと、有岡さんの顔が目の前にあって

今どんな状況なのかが把握できた。


ドクドクと心臓が脈打って

顔が紅潮していく。



「あ……」



有岡さんの顔が離れた後も頭のなかには一つのことばだけ。




─キスされた─



―第6話に続く


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