第三章


[01]その感情の名は


虚ろな瞳が印象的だった。
何もその瞳に映さず、ただ生きてる…
彼の世界に色は付いていないのだろう。それは悲しい
それは虚しい
それは…苦しい


その場所にいつも彼はいた。
見かけるたびに胸が締め付けられる…

この感情の名は?

気がついたら話しかけていた。
「どうしたの?どこか痛い?涙が出てるよ」
涙を指ですくい、なめてみた。
しょっぱい…
暖かい…
「ここでいつも見かけるんだ。何か見えるかい?」
彼は身動き一つせず、静かに涙を流していた。
その様が美しくて俺は彼に見惚れた。

かすれた声で彼が…「…ずっと会いたかった…」と。
そして俺にすがるように抱きついてきた。
そこに俺が本当にいるのか確かめるように、背中をさする。
運命と呼ぶ物があるとすれば、今かもしれない…。

この感情の名は?

愛と呼ぶのだろうか。
こんなにも彼が愛しいのだ。



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