第一章


[01]無題


家族が嫌いだった。何故かと、聞かれると分からない。
けど嫌いだった。

僕は五人家族の末っ子だ。
両親は忙しく毎日、仕事に励んでいた。僕は両親が嫌いだった。
共働きで、いつも家に居ないから。
兄や姉は決まって言うのだ…
「僕らを養うために頑張ってるんだから」と。
そんな事分かってるよ…
本当に分かってた。でも、寂しかったよ
気持ちを伝えたら、困った顔をして頭を撫でてくれた。幼心にひどく傷ついた。
自分を否定されたように思ったよ。

少年期に入り、寂しさは苛立ちへと変わった。
何故?何故?何故?何故?何故?何故?
甘えたくとも、当たり前のように働きづめの両親。
机の上には見せられる事の無い、授業参観の通知やテスト用紙だけがたまって行った。
苛立ちが自分では抑え切れなくなり、壁や机を殴りつけ自分を傷つけて、頭を冷やした。
ボロボロになる自分の指を見て安心感を覚えた。
それから、いつも僕の指にはバンソーコーが貼ってあったが両親は気がついてはくれなかった。
それが、拍車をかけた。
思春期に入り、家に帰らなくなった。
誰も心配しないから。煙草を覚え、酒を覚えた。
自分の中から何かが割れた音がした。

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