〜第3章〜 清奈


[26]2006年8月1日 夜7時07分


一斉にアーチャーが弓を放った!
空には無数の矢が飛ぶ。
その数は数えきれない。私はとっさに左へ転がって避ける。

「く……!」

避けてからも、なお弓が私目がけて飛んで来る!

私はたまたま止まっていたアイスクリーム販売車の影に隠れる。
それで弓矢の雨はしのげた。

だが問題の動力室とは反対側だ。遠ざかってしまった……。

まだアーチャーは私を狙っている。出れば非常に危険だ。

すると耳障りな鳴き声が私の耳に響く。
目の前に、私を車の陰から追い出そうと4匹のトカゲが私を囲む。

フェルミを握る。だが下手に動くとアーチャーの死角から出てしまう。
トカゲが私に、同時に攻撃してくる。
私はそれを何とか受けながし、4匹中1匹だけ剣を弾き飛ばして、左足で蹴りを入れた。
そのトカゲが吹っ飛んだ。瞬間、アーチャーの弓矢がそのトカゲに飛び、たちまちハリネズミのようになった。

どうすればこの状況を脱せられる?
ここで時間を捕られたら、ネブラの指揮者にチャンスを与えてしまう。そしてフェルミの防御壁。効果が切れてしまえば最後、私は100℃近くの超高熱空間に放り出される。そうなれば私は一瞬で絶命するだろう。
考えるんだ。
まずはあのアーチャーの攻撃から振りきる。そして動力室に向かう方法を。



その方法を、一つ思いついた。

私はアイスクリームが並べられている車の中に入り、棚の上に乗る。そしてそのまま運転席に滑り込む。

《運転できるのか?》
「出来るわよ。要するにこれを踏んでこれを回せば良いんでしょ?」
《確かにそうだが……。エンジンの鍵はあるのか?》
「エンジの鍵? ここに差さってるわ」

それを回す。アイスクリームの販売車は常に動き回るから、たまたま差しっぱなしになっていたのだろう。

車が震える。どうやらエンジがかかったらしい。
同時にトカゲが入ってくる。

《左手のシフトをPからDにしろ!》

すぐさま左にあったレバーをDに合わす。

《行け!》

おもいっきり踏み込む。
車が急発進する。そのままUターンした。後ろにいたトカゲが外に弾き飛ばされた。商品棚も外に飛び出すがどうでもいい。

私はそのまま動力室に向かい車を走らせる。
その前にやってきたのは弓矢の雨。
天井が弓矢を弾き返す。
これなら行ける。

私が座っている反対側の窓が弓に突き刺さり割れたが、問題ない。


動力室に向かい車は猛スピードで動く。
私は更に車を加速させた。
《セイナ! それ以上スピードを出すと……!》
「危険は承知でやってるわよ!」
さらにスピードを上げる。ぎりぎりまでスピードを上げ続ける!

《衝突するぞ!!》

あと5メートル……!

今だ!

私は走ったまま運転席のドアを開けて飛び降りた!

衝突する直前で無人になった車。運転席が不在になりその車は――
けたたましい爆発音と共に動力室へと突っ込んだ!

私が飛び降りた場所も計算通り、アーチャーの死角だ。

動力室からネブラの断末魔が響く。たちまち車が燃え上がり、パチパチと火の粉を散らしている。

《これで……やったか?》
フェルミの声を聞く。
私は気配を探ってみる。


「……しぶとい。まだ生き残ってる」
《どうするのだ?》
「入るわよ。中に」

入口のドアが壊れて外れている。階段は下へと続いているらしい。私はゆっくりと侵入しはじめた。

中は電灯らしきものもなく、下へ行くほど闇が広がる。この先は不意打ちに注意しなければ……。
私は全神経を集中させて、ネブラの気配を探す。

ゆっくりと足は前へと動く。私はもういちどフェルミを握り締めた。



階段の段数にして約7段程前に、一匹いる。

私はゆっくりと前に手を伸ばし、

「プレスト!」

一筋の雷が狭い階段を駆け降りた。一瞬雷光で下がはっきり見えた。やはり私の読み通り前方にネブラはいた。下はかなり遠く、まだ30段は残っている。

ゆっくりと……ゆっくりと。

時間はまだある。ここでの焦りが死に繋がる。

一歩……もう一歩……
また一歩……。



プチッ

頼りない糸が切れたような音。

その瞬間!!

「はっ!!」

とっさの判断で私の左斜め後ろから飛んできた矢を弾き飛ばす。
一瞬判断が遅れれば私の頭に突き刺さっていただろう。



だんだんと目が暗闇に慣れてきた。
おかげで辺りの様子なら分かるようになった。
ネブラの気配が無いが、さっきのようなトラップは気配が無いせいで、慎重に進まねばならない。

前に手を伸ばし、細い糸を探る。



ようやく下まで降りた。
トラップはやはり1つではなかった。計6つだった。
最後まで降りて前を見ると少し前に扉がある。この先からが勝負だ。

私は左手でフェルミを持ち、余った右手でドアを勢いよく開けた!

すぐに中に入り待ち伏せするネブラを探すが
どこにもいない。

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