第2章 苦しい


[04]涙


でも明はね…あたしより今は優だよね。

多分…明に告白したのは優だと思う。

明と話してる優の姿はホントに可愛い。

ショートカットヘアに赤く染めた頬。小さな顔に笑うと細い目。

黒縁メガネをかけていてあたしよりも身長が大きい。…と言うことは明よりもはるかに大きい。

ずっと明の事で休みを満喫出来ずに月曜日を迎えた…。



1時間目。音楽。

最近音楽発表会に向けての練習が多かった。

「あぁヤバイなぁ…」

望と寄り添いあたしは泣き言を言う。

今日は再オーディション。

先週、合奏の特別楽器オーディションで落ちた人はチャンスで一回、今日再オーディション。

あたしはキーボードを弾きたいと思い既に合格した望に猛特訓を申し込んだ。

「大丈夫だって!!綾なら絶対合格する!!」

その言葉であたしの指は真剣モード。

4列で並んであたしはドキドキとする胸を抑えて必死で練習する。

「おい安達!!」

前から男子の声。

誠と五十嵐だ。

「何」

「和と連絡取ってるってマジ?」

五十嵐が興奮気味に聞いてくる。あたしは完全無視をする。

「綾だよぉ  ((笑」

「ぁ、バカ!!」

誠の頭を殴りあたしは練習に励む。

「明が言ってたけどさ…」

あたしに顔を近付ける誠はとにかく気持ち悪い。

「先週の金曜に和と寄り添って歩いたんだって?」

自分の中にある記憶を辿りあたしはほんのり顔を赤くした。

「別に寄り添ってないし!!」

明を見付けて鋭く睨みつける。

「照れんなよぉ」

「ふざけんなよ…」

先生の目を盗み誠と五十嵐を殴る。

別に寄り添って歩いてない…。

ただ会話を交すために歩いてただけなのに…。

なんでそんな話を五十嵐とかにするわけ?意味分かんない…

直接あたしに言えばいいのに…。

「和の事好きな―――「うるさい…」

「…安達?」

「うるさい!!」

考えてるうちに悲しくなってあたしは涙を流す。

好きじゃない…好きじゃないのにそう言われるのが凄く嫌で。

悔しくて…。

でも一番最初に感じたのは…

胸の締め付け。

苦しかった。

『泣くなよ!!』

いつか言ってた明の言葉。あたしが泣いた時に明のせいじゃないのにあたふたして言ってた…。

それが今…

「泣くなよ…」

五十嵐が言った事であたしの目にはもっと涙が溜る。

今はそれを無視して指練習を続けた。

五十嵐と誠とその他の人はあたしを心配しながらも気にしながらも練習を続けた。

あたしの再オーディション…。

列から立った時に偶然明と目が合った。

明は何か言いたそうに口を開いたが優によりそれは胸の中へとしまわれた。

あたしは明を忘れてオーディションを受けた。

結果…

――ギリギリ合格

音に集中出来ず、ずっと明が何を言いたかったのかを考えていたから…

でも合格出来た嬉しさは変わらない。

それから、人目に合わないような場所で少し涙を流してから教室へと戻った。



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