アコガレ


[03]シュウセイ


「なかなか泳げるね?どう水泳部入ってみない?」
誰かが話しかけてきた。あっ塚原先輩だ!
「いえ、僕は大したことないですよ。」
「そうでもないと思うけどな。あ、私水泳部の部長の塚原ひびき。もし気が変わったら言ってね。」
「僕は2年の橘純一です。」
「橘くんか…よろしくね。」
やった!塚原先輩とお近づきになれたぞ!森島先輩もいいが、塚原先輩もいいよなウン。
「先輩、何やってるんですか?」
あれ、七咲じゃないか、そういえば水泳部だったな。
「補習が終わって、少し泳がせてもらっていたんだ。」
「そうだったんですか。」
「あら、二人は知り合い?」
塚原先輩は言った。
「はい、妹が友達なんで、それで知ってるんですよ」
「ふーん、それだけ?」
「はい?」
二人で声をそろえて返事をしてしまった。別にそれ以上じゃないよな…
「じゃあ私、もう少し泳ぎますから」
七咲は言った。なんか普段と様子がおかしいぞ。
「七咲はうちの期待の新人でね。私も期待してるのよ」
「そうなんですか」
僕は塚原先輩と話ながら、七咲の泳ぎを見た。あれ…
「七咲、ちょっといいか?」
「橘先輩、何ですか?」
七咲プールから上がった。なんだ!この鍛えられた中に、光るボディライン!なんて考えてる場合じゃない
「七咲、なんかターンの時壁より遠くでターンしてないか?」
「あ…そうでしょうか?」
「うん、だからターン直後の壁を蹴る時距離が遠くなるからターンの後の切り返しで損してると思うだ」
「橘くん、なる程、私も泳ぎを見てたけど、その微妙なとこまでは見てなかったわ。」
塚原先輩が言う。もしかしたらこれでタイムも少し違うと思った。
七咲は少し泳ぎを修正し、タイムを計った。塚原先輩の合図でスタートし、飛び込みから泳ぎ、ターンをさっきより近くして、ターン!やっぱりさっきより勢いがついた。そしてタイムは…
「七咲、タイムが良くなってるわ。橘くんのおかげね。」
「橘先輩、ありがとうごさいます。私言われなきゃ分からなかったと思います。」
こうして、七咲の泳ぎを見た。良かったな、七咲。
「純一〜補習終わったよ〜」
梨穂子が呼んでるな…じゃあ帰るかな。
「では塚原先輩、僕はこれで」
「うん、今日はありがとう。」
「では失礼します」
こうして僕はプールを出た。
僕はすぐ帰ろうかと思ったが、梨穂子に挨拶してからでも遅くないかと待っていた。
「あれ、純一?もしかして待っててくれたの?」
「いや、挨拶してからでも遅くないかなってな」
「純一、良かったら一緒に帰らない?この前は気にしてくれたけど、別に幼なじみなんだし、一緒に帰っても変じゃないでしょ?」
「そっか…梨穂子がいいなら僕はいいよ」
そして梨穂子と帰った。なんか久しぶりだな。
「純一すごいね。水泳部に誘われてたよね〜」
「ああ、ただ、泳ぐのは遊びで十分だな。タイムとか計りたくないし」
「そうだよね〜」
「梨穂子は早くビート板を卒業しなきゃな」
「うーん、多分無理…かな?」
梨穂子と話しながら帰った。なんか今日は面白い一日だったな。

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