ツヅキヲシヨウヨ


[03]追憶


鏡を前に、不審がるみちるを敬輔は後ろから抱きしめた。
「け、敬ちゃん?!」
鏡ごしに、二人が見つめ合う。
「昔…じいちゃんの法事で、集まった時の事覚えてるか?」
「……うん…」
「あん時、蔵でみちるの胸、触ったよな…」
「…ぅん…」
みちるが恥ずかしそうに顔をふせた。


敬輔が高1、みちるが中3の頃の夏、祖父の法事で親戚が集まった。
敬輔とみちるは親に頼まれた物を取りに蔵に入った。
「みちる!ちょっと来てみ!」
「何、何?」
みちるが覗き込むと、浮世絵のような古い絵があった。
「何これ…」
よく見ると、それは男女の性行為の姿だった。
「春画ってヤツかな?ようは昔のエロ本みたいな?」
「ゃだあ、なんでこんなのがあるの?」
「さっき、じぃちゃんの遺品の中に入ってた。じいちゃん、スケベだったからなー。」
敬輔は絵を食い入るように見た。
絵は着物を着た女の体に、男根が入ろうとしている様子を描いていた。
平面的なようでありながら、肉質はリアルで、写実的な絵画よりも、いやらしく感じた。
男根は、強調して描かれ実際よりも大きく、みちるの目を引いた。
「なんか、変なの。」
「でも…エロいよな…」
二人は自身の鼓動が強くなるのを感じた。
「みちる…あのさ…」
敬輔が言いづらそうに、口ごもった。
「…胸…触らせて…」
「えっ?!えぇ〜?」
「ごめん、嘘嘘」
敬輔は慌てて撤回した。
「……いいよ…敬ちゃんになら…」
みちるがしばらく迷い躊躇いつつも、了承した。
「えっ?い、いいの?マジで?」
「…ぅん…」
敬輔がみちるの胸をシャツごしに恐る恐る触れた。
感触を確かめるように、そっと揉んでみる。
「ふにゅふにゅして、超柔らけぇ…」
みちるは恥ずかしそうに顔を背けている。
敬輔は乳首の付近を指で押した。
「ゃんっ!」
みちるは感じてしまい、声をあげた。
敬輔は、ますます興奮し、みちるのシャツのボタンに手をかけた。

「ちょっとおー、敬輔ぇー?まだ見つからないのーぉ?」

蔵の外から母親の声がした。
二人は慌てて離れ、蔵を出た。
その後二人は気まずいまま、口をきく事も無かった。


「あの時、母さんが来てなかったら…俺、止まらなかったと思う。」


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