†番外編†


[02]大今君と寺田君と軒澤君


春爛漫。

入学式。

彼らは高校生になったのだ。

その名も、

大今 紘慈(オオイマ コウジ)。

寺田 由貴(テラダ ヨシキ)。

軒澤 護(ノキザワ マモル)。

彼等は傍目から見れば仲良し三人組だが、実は違う。

寺田君と軒澤君は恋敵だった。

同じく高校生の中山 理美(ナカヤマ サトミ)に二人は恋して居たのだ。

しかし、鈍感な紘慈はそんなことはつゆ知らず、勝手に仲良しグループと称して二人を居心地悪くしていたのだ。

寺田君は言わば好青年。爽やかで明るく、多少不真面目な所もあるが、やんちゃなファニーフェイスにはきゅん、と来るものがある。

軒澤君は正反対。寡黙で落ち着きがあり、真面目なお兄さん的立場。しかし、稀に見る微笑みは極上の砂糖を溶かした様に甘いのだ。

「こら、人の友達で遊ぶな。」

頭に激痛(嘘)と現実に引き戻してくる悪魔の声が聞こえた。

「痛ぇな、兄貴!!これから泥沼三角関係が出来るんだぜ!?」

兄貴はでかい溜め息を吐いた。

「これからその二人が遊びに来るんだけど?」

「まじかよ!?今日も遊んでもーらおっと♪」

…‥。

伶羅の奴、また僕らの邪魔をする気かよ。

まぁ、良いか。

賑やかな事は悪くない。

因みに、妹はあぁ言ったが、僕はちゃんと二人が恋敵の事を知っている。

それでも敢えてこうして連んでいるのだ。

理由なんか特にないが、強いて言うなら僕が二人を好きだから。

「やっぱりさぁ、」

伶羅が口を開けた。

「あたし、ノーマルじゃ駄目だわ。つー訳で、兄貴はどっち派?」

「却下。」

「何それ、返事になってねぇよ!!」

妹が僕の足を蹴る。

都合悪くインターフォンが鳴る。

僕は痛みに耐えながら、扉を開けた。

「よーす、なぁなぁ、やっぱりゲーム中止にして、花見にしようぜ?」

こんな風に、唐突に思考を変えるのは寺田。

それに臨機応変に対応して団子とか甘酒を持ってきてくれるのは軒澤。

「あたしも行きたい!!」

それに目を輝かせるのは伶羅。

「おう、じゃあ、物置からレジャーシート取ってくる。」

そして、周りに気を利かせられるのが大今。

そんな彼らが幸せだったのも、束の間だった。

−−−−−。

「初めてだよ、丘に着いた途端に強風に煽られて終いに雨に降られるの。」

大今邸にて、彼等は服を乾かしていた。

珍しく軒澤が喋った。

「こういう事もある。」

「誰だよ、花見とか言い出したの。」

「てめぇだよ!!」

彼等はふざけあいながら、楽しそうに笑いあっていた。

しかし、本当の不幸は後で訪れる。

紘慈が行久と出会う、数時間前の出来事だった。


[前n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.