一話


[01]失った。何もかも…


男は失った。何もかも…

仕事、お金、そして…

人の世はいつも偶然の重なりで人生は思わぬ方向に行ってしまうものだ。
男はギャンブル好きのだらしない男だ。その日も男はギャンブルに負け苛立ちを隠して車を走らせていた。場所は交差点。一時停止を無視した男の車は事故を起こした。男は任意の保険に入っていなかったのだ。ギャンブルに継ぎ足した結果払うべきお金も払わず起こした事故だった。

男はその場を動けず茫然自失していた。
何が起こった?俺は何をした?この先どうなってしまう?
男は相手の車へふらつく足を懸命に動かしながら向かった。相手は動いていた。男は不謹慎にも安心していた。ただ男は保険に入っていない。車を直すお金が無いのだ。
男は自分の不甲斐なさを呪った。
人生とはいつも偶然の重なりなのだ。
何故?
自分の質問に人生はいつも答えを教えてはくれない。
その質問は過去を示しているからだ。テストの問いはケシゴムで何度でも戻せる。ただ人生にケシゴムは無い。あるのは生か死だ。男は消せぬ罪を死の答えで答えようとしていた…


その日の夜、男は友に呼ばれ話をした。人とは時に単純な生き物だ。下手な考えはよせと言われ、自分の答えが間違いと気付くのだから。

臭い言い方にはなるが、お金では買えない物を男は見た。
家族、親友、人の気持ちや絆だ。
そのプラスの答えに男のマイナスな考えは打ち消されれた。

男は泣いた。隠れて泣いた。人に弱みは見せられないそんな男だ。

その後は事故のその後の話となる。

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