つばめのミット


[01]第一章窓の外


少年の名は近藤誠(こんどう まこと)。幕末、京都を取り締まった「新撰組」の局長、近藤勇の子孫であり、京都と兵庫の県境あたりにある中学校に通うごく普通の中学生だ。誠は、一年前受験してこの「私立嶋丘高等中学校」に受かった。この学校の特徴は、共学であるにもかかわらず3割程度しか女子がいないこと、とても自由な校風であること。そしてとりわけ、野球部が本当に弱いことだ。入学してから一年間、誠は学校の窓からその弱小野球部を見てきた。誠が感じたことは、部員の動きがとろいこと、そしてバッテリーの相性が全くあっていないことだった。
今日も誠はいつものように野球部を見ていた。ちょうどシートノックの時だった。球がショート側に転がる。捕った、と誠が思ったとき、ショートは正面からのゴロをグラブで弾き、真上に飛ばした。
「ほんまによわいなぁ。」隣で見ていた土方歳伍(つちかた としご)が話しかけてきた。
「正面からゴロ受けてとれへんとか初心者以下やし。」土方はため息をつき、隣のバッティング練習を見た。そこには、百キロあるかないかぐらいの球をくるくる空振りするバッターたちがいた。土方は、さっきより大きなため息をつき、
「サッカー部は強いのになぁ。」と言って窓から離れた。確かにサッカー部は強い。この前は地区大会優勝のニュースで校内が持ちきりだった。
「まあ、今年の新入部員が強いらしいからいい監督でも入れば強くなるんじゃないの?」誠はそう言って土方を追った。すると土方が突然振り返り、
「今日、公園行くorz。」と言ってきた。


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