第40章


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「話が早いじゃねーか」
 マニューラは口端に冷たく歪んだ笑みを浮かべ、睨み返した。
「いい目だニャ。アンタからは同じ臭いを感じていたニャ。何か大切なものを奪われて、憎くて憎くて地の果てまで追い詰めてでも始末してやりたい奴がいる……余計な恩は三日で忘れられても、恨みだけは決して忘れないのニャ。猫ってのはまったく因果なもんだニャ」
「ヘッ、全くだね」
「その焦がれる相手の身形を言うニャ。敵と手段は違えど、同じ道を行く同志への手向けニャ。
まったくのロハで知ってることを洗いざらい話してやるニャ」
「……隻眼、真鍮色のバンギラス」
 腹の底から煮えくり返るものを堪えるように表情を強張らせ、マニューラは答えた。
それを聞き、ペルシアンは少し意外そうな顔をする。
「知ってんだな……?」
「ああ、うん、同じ奴の行方を捜しに来たのが前にもいたから驚いてニャ。他のお客の事はあまり話せないけど」
「その奴らの中に、青っぽい毛並みをした年増の猫がいなかったか?」
「年増って言うほどでもなかったと思うけど……知り合いかニャ?」
「まーな。腐れ縁とすら言いたくもねえ、昔からの厄介さ。何を企んでやがるのか知らねーが、バンギラスが生き延びてやがるとオレに告げ口に来やがったのも、あの年増だからな」



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