第40章
[24]
※
翌朝。
意識が引き戻され、瞼を飛び起きるように上げると、覗き込む赤い瞳とばったり目が合った。
不意だったのか、白い毛並みを少しびくっと揺らしてから、
「おはよう」
アブソルは何となく恥ずかしそうに言い、一歩退いた。
「ああ……、おはよう」
気だるさを堪えながらゆっくりと俺は上半身を起こす。どのくらいこうしていたのか。
固い床で寝ていたせいで、あちこち痛む。いつの間にか体に掛けられていたマントを拾い上げ、硬くなっていた全身を解き解すように伸びをして立ち上がった。
「ギラティナさん達、行っちゃった」
マントを羽織ろうとする横で、アブソルは独り言のようにそっと言った。
「何だ、起きて聞いていたのか?」
ううん、とアブソルは首を横に振るう。
「寝てたけれど、ギラティナさん達の声が聴こえた。ありがとう、今までお世話になりましたって。
もうひとりのボクに言いにきたみたい」
例え一時いがみ合っても、神であっても、親と子か。
「寂しいか?」
「うん、少し。もうひとりのボクも全然平気なふりしてるけど、何だかちょっぴり元気ないかな」
「ふむ……」
別れの寂しさは、時が解決するほかあるまい。
「でも、平気」
そう思っていた矢先のアブソルの言葉に、「うん?」と俺は首を傾げる。
「みんなもいるし、それに――」
言い掛けて、どこかもじもじとアブソルは俺を見る。不思議に思って見返すと、アブソルは少し顔を赤らめて、あははと誤魔化すように笑った。
「とにかく、大丈夫だから。そうだ、それより、食堂でみんなが待ってるみたいだよ。大事な話をするんでしょ。
一度ロズレイドさんが様子を見に来たんだけれど、ピカチュウがとっても疲れた様子で寝てたから、無理に起こさないで自分から目を覚ましたら伝えてって、先に起きてたボクに言ったんだ」
「……そうか、ならば急いで行くとしよう」
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