第37章
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ミミロップの突然の提案に、ハガネールは「ふうむ」と唸り、ひとしきり悩む。
「……そうさな。またいつヤミラミのような不届き者が現われんとも限らん。おぬしらの保護下に入った方が良いのやも知れぬ」
「それじゃあ――」
「うむ。統治者に伝えてくれ。これより鋼鉄島はおぬしらの組織へ加盟する」
「やったぁ!」
ハガネールの承諾の言葉に、ミミロップはぴょんと小さく跳ね上がって喜びを表現する。災い転じて福となす。転んでもただは起きないミミロップのしたたかさを、ルカリオはただただ呆れ返って見つめていた。
「では早速ブイゼル共を使いに出させてこよう」
「ええ。任せたわ、チャーレム。思わぬ土産ができちゃった」
・
「本当に私達と一緒には来てくれないんですか、師匠ー……」
しょんぼりとした様子でミミロップは出航間近のホエルオーの背から、ルカリオに声をかける。
ヤミラミの一件から時は経ち、本土のポケモン達の協力もあって、島に残された傷跡も完全に癒えていた。
「今生の別れでもあるまい。お前が波導を志すかぎり、いつか再び道が交わることもあろう」
別れを惜しむふうもなくルカリオは言葉を返す。
ミミロップの修業は指導を受ける段階を終えて独り立ちの時を向かえ、以後は、自らの手で道を模索し、鍛練していかなければならないとルカリオは告げた。ミミロップは、組織に加わってくれればとても心強いとルカリオを誘ってみたが、自身も修業のためにこれからも旅を続けるのだと断られてしまった。
「忘れるな。波導に終わりは無し。生涯未熟なり。驕ることなく、己を磨き続けろ」
「はい!」
潤む目をこすって拭い、ミミロップは声を張った。
ホエルオーが出航の汽笛代わりの鳴き声を上げ、ゆっくりと岸を離れ始める。
「それじゃあ師匠、お達者で!」
「息災でな」
見送るルカリオの姿が点になって見えなくなるまで、ミミロップは両手を振り続けた。
鋼鉄島での修業は、ミミロップを身体的だけではなく、精神面でも大きく成長させた。
「よーし、頑張るぞー!でも、洋館に帰ってから少しの間くらいはサボってのんびりしてても、ばちは当たらないわよね」
……はずである。
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