第39章


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 改めて安堵の息をつく俺に、よかったねとアブソルが笑いかける。
ああ、と俺は慣れない微笑みを返した。
そんな俺達をどこか優しげに見つめる眼差し。直ぐに気付き、俺は慌てて緩んだ顔を引き締めてそちらを見上げた。
ふ、と微かに笑った後、パルキアは真剣な眼で俺を射抜くように見つめる。
「託しましたよ」
 簡潔ながら力の籠もった言葉。
「うむ」
 真っ直ぐに見返し、応えた。
 深く噛み締めるようにパルキアは目を閉じ、頭を下げて礼をする。
「感謝いたします。世界が我らの手を巣立ったと同時に、我ら――私も解放された。
創られてより過ごした永劫ともいえる月日の中で、たった今初めて生を受けることが出来た……そんな気さえします。
世界には様々な変化が緩やかながらも徐々に確実に訪れていくでしょう。そして、変化に伴なう困難も。
しかし、あなたなら、あなた達ならば必ずや乗り越えていける……確信しております」

 パルキアは俺達の目の前に空間を斬り開き、別の空間へ通じる入り口を繋ぐ。
水面のように光が揺らぐその先に垣間見えるのは鬱蒼と生い茂る木々と、奥にひっそりと佇む見慣れた、だがすごく懐かしい――古ぼけた洋館。

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