第三章 迷い〜そして戦場へ〜
[08]第四四話
「かぁ!」
加治は恫喝すると、拳を思い切り振った。
すると、目には見えない何かが敵を襲う。
「ぐわ!」
「がはっ!」
「まだまだだ! 我が一門の古弖義(こてぎ)流、これで終わりと思うな!」
「加治殿、いささか暴れ過ぎかと」
そんな事を言いながら、セイランは自分の刀に炎をまとわせ敵に峰打ちを食らわせいる。
「へっ! 久々の戦闘に血がたぎってるんだよ!」
「どこのガキ大将ですか………」
セイランは半ば溜め息をついて言った。
彼らが空中戦を展開して三十分。
表向きは余裕しゃくしゃくとしているが、内心は焦っていた。
これが誘導だと分かった時には、戦闘の真っ直中だったのである。
「このヤロ、ちょこまかと動きやがって!」
「この機動力………確かに誘導部隊にはうってつけですね」
加治は苛々しながら、セイランはあくまでも冷静に感想を呟いた。
第三次防衛線にいる哨戒班や防衛班が背後を突かれる心配は今のところない。
どうやら敵の目的は、純粋に遺跡にあるようだ。
「しかし……この者達、一体何者……?」
魔導を志す者としての装備は標準以上で、かなり近代的な装備だ。
これだけの人数と装備という事は、かなり大規模な組織なのだろう。
「まさか闇の組織の一派か?」
セイランは敵を気絶させながらそう思った。
「それはねえだろ。闇の波導が感じないぞ!」
聖拳突きや空手チョップなどの技を繰り出しながら加治が言った。
「確かにそうですね。とにかく、邪魔者は消しましょう」
セイランが刀を構え直した。
刹那、沖合から強力な火線が四条飛んで来た。
それらは陸や空で展開していた多くの敵を一瞬で飲み込み、原子のレベルにまで蒸発した。
「ついに到着したか」
「潜水艦隊による誘導火砲ですね」
空中を戦場にしていた敵の航空部隊は、その一部が浮上し姿を見せる潜水艦へと攻撃を開始した。
その直後、二つのプロペラを持った大型のヘリコプターが彼らのはるか上空を飛び越えていった。
当然のようにヘリコプターが狙われるが、潜水艦からのビーム砲による牽制で断念せざるを得ない。
「どうやらヤツの息子が乗ってるみたいだな」
「そのようですね」
加治とセイランは、自分達の遥か頭上をも通過したヘリコプターを見て呟いた。
そしてすぐに戦いに集中し始める。
「これで挟み撃ちの懸念はなくなりました」
「存分に暴れようか?」
「お任せします」
加治は獰猛な笑みを浮かべ、セイランはあくまでも冷静でいた。
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