第37章
[21]
攻撃の手から悠々と逃げつつ、ヤミラミは問い掛ける。
「お嬢ちゃんは、このシンオウで大きくのさばっている一勢力の話を聞いたことがあるか?」
答えを待たず、ヤミラミは続ける。
「そのトップはピカチュウで、幹部の四天王には君と同じ種族がいるそうじゃないか」
まさしく自分のことだと、ミミロップは気付いた。荒れた息を整え、
「ええ、よく知ってる。だって、あんた達の目の前にいるんだもの。
私こそピカチュウ四天王が一匹、ミミロップ! 今更謝っても遅いけどね」
堂々とミミロップは名乗る。自分の正体を知れば、ヤミラミ達は怯んで退くかもしれないと考えたのだ。
癪だったが、じり貧にしかならない状態から抜け出すには仕方がなかった。
「そうかそうか。やっぱりか。こりゃあ良い」
だが、ヤミラミは怖じ気もせず、吹き出すように言った。
「えぇー、ちょ、ちょっと! もし私に何かあったら、組織の皆がただじゃおかないんだから!」
慌ててミミロップが言うを見て、ヤミラミ達はげらげらと笑う。
「おいおい、勘弁してくれ、今更それか。ここでお前を倒し、
ルカリオとハガネールも始末すれば、誰も俺達がやったなんて証明できやしなくなるんだぞ」
うぐ、とミミロップは言葉を詰まらせる。苦笑いの表情に冷や汗が伝った。
「ハハッ、いやあ、まさか四天王の一匹ともあろうものがこの程度とはなあ。
他の側近、ひいてはピカチュウ自体もたかが知れるというものだ」
「なんですって?」
ぴく、とミミロップの眉が反応する。
「トップが本当に有能なら、部下もまた有能揃いなものだと俺は思うね。その逆もまた然り。
部下が無能なら、トップの実力は推して知るべしだ。
そうだ、ハガネールとルカリオを倒して鋼鉄島を乗っ取った後は、
本土に渡ってお前達の組織を次のターゲットにしてやろう」
「……!」
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