第25章
[19]
食事を終えた俺は部屋を出、岩壁の段差をひょいひょいと飛び降りた。
着地の際にマントについた砂埃をぽんぽんと手で払い、ミミロップ達が待っているであろう食堂代わりだった昨日の広間へと急ぐ。
徐々に下へ向かう長い廊下を渡り、左へ折れた曲がり角を抜け、広間への入り口が見えてきた。入り口の横に、ロゼリアが腕を組みながら壁に寄り掛かって立っているのが見える。
「あ、ピカチュウさん」
俺に気付き、やっと来たかという様子でロゼリアは顔を向けた。
「おはようございます。相変わらず早起きですね」
そして皮肉めいた挨拶と微笑みを俺に投げ掛けてくる。
「……もう平気なのか?」
少し勘に触ったが、軽く受け流した。怠惰にとらわれた俺も悪いのだ、気を付けねばな。また奴に寝込みにおかしな事をされんよう、隙を見せないようにしなければならん。
「ええ、まあ……。まだ胸焼けはしますが」
苦笑いをしながらロゼリアは答える。余程、色々と濃かったのだろうな。少し同情してしまう。
「それで、その胸焼けの原因たる奴はどうしている?」
ロゼリアは無言のまま左のバラで、広間の入り口側から見て左前方辺りにある、小部屋の入り口を指し示す。あそこは確か食料庫兼厨房……? 疑問に思い、覗いてみると――。
「ふんふんふーん」
鼻歌混じりに、四本の腕を駆使しながらカイリキーが木の実を素手で搾っていた。筋肉ジューサーにより圧殺された木の実は、水気を完全に失って干からびたミイラとなり、手から滴る汗の混じった果汁は硬い木の実の殻でできた器へと注がれている。
色々と疑問は押し寄せてくる。だが、まず最初に浮かんだのは――俺はもしかして“あれ”を飲まされたのか? そういえば、思い返してみると朝食のジュースは嫌に塩気が――。
俺はふらふらと力なくロゼリアの隣へ行き、同じように壁に寄り掛かかり、二人でしばらく無言のままうなだれていた。
後に通りすがったミミロップとアブソルとムウマージ、実態を知らなかった手下達もこのジュースの正体を知り、同じように俺達に加わっていって陰鬱とした行列となったのは言うまでもない――。
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