第33章
[07]
鏡から抜け出てきたかのように、それは一挙一動から俺達そのものだった。
唯一、異なる点は、四匹の体に不思議な痣のようなものがあることくらいだ。
頬や額、あるいは脇腹など、各々が違う位置に、独特の紋様が描かれている。
また悪夢を見せられているのだろうか。いや、それは有り得ないだろう。
ここまで現実と錯覚させるような悪夢は、ダークライにしか造りえない。
奴は神々の監視の下で厳重に投獄されているはずである。
悪夢であったほうが幾らかましだと思うほどに、それは信じがたく、異様な光景だった。
「まさか。僕は騙されませんよ。どうせメタモンか何かが僕達に化けているだけでしょう」
ロゼリアの言葉で、俺は我に返る。
そうだ。メタモンならば、俺達そっくりに化けることも可能かもしれないと、自らに言い聞かせた。
だが、それは、そうであって欲しいという願望でしかなかった。
ミミロップによく似た“それ”は、大きく嘲笑う。
「バーカ、あんな下等な軟体生物共と化けたものと私を一緒にしないでくれる?
私とこいつらは、ミュウツー様があんた達を元にして造った、れっきとした実物」
願望は、脆くも崩れ去っった。衝撃と、それが意味するおぞましさに、吐き気が込み上げてくる。
「つまり、僕達のコピーを造り出したということか。なんて恐ろしいことを……!」
嫌悪感に身を震わせ、ロゼリアは言う。
コピーであるミミロップは顔をしかめた。
「コピー? それはちょっと聞き捨てならないわ。私は、あんた達と違って、
ミュウツー様による改良と調整を受けている。つまり――」
一瞬の内にコピーミミロップは本物のミミロップに詰め寄り、蹴りつけた。
「つ……ッ!」
ミミロップは咄嗟に腕で防いだが、その威力に大きく後ろへ吹き飛ばされる。
「すべてにおいてあんた達より優れているってこと! もう用済みなのよ、あんた達は。あははははははは!」
「ミミロップ!」
吹き飛ばされていった方へ振り向こうとした瞬間、俺の体に強い電流が走った。
「他の物にかまけている暇など与えんぞ、オリジナル」
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