第40章
[03]
騒ぎ立つ屋内、交わされる上機嫌な笑い声。
へとへとの俺は何か温かく柔らかな椅子の上で、ぐったりとして座っていた。
――俺の身にいったい何があったというのか……。くらくらする頭にはまったく考えがまとまらない。
「大丈夫?はい、お水」
耳元近くに囁く声と共に冷たく固い感触を口に押し当てられ、俺はなすがまま無意識にごくごくと喉を鳴らす。ひんやりとした喉越しを知覚するに伴なって、ぼうっとした頭にも徐々に意識が注いだ。確か、ええと――
光を抜けて森に降り立った俺とアブソルをまず初めに見つけたのは、木の上でぼんやりと見張りをしていたヤミカラスだった。
声をかける間もなくヤミカラスは転げ落ちそうな程に驚き、慌てふためいた様子で洋館に飛び込んで行った。
その後は、まさに蜂の巣をつついたよう。正面扉が勢いよく開いたと思うと、中から次々に茶色、緑、紫、少し遅れて紺と黒、色とりどり様々な姿が飛び出し、怒涛の如く押し寄せてあっという間に俺達は飲み込まれた。
最早入り混じりすぎて判別不能の歓喜と驚きの声に揉みくちゃにされながら担ぎ上げられ、祝宴の用意だと洋館の中までそのまま運び込まれて、それから……。
ぼんやりと見回す目に、広い卓上をステージ代わりに妖しく踊るマニューラとニューラ達、ついでに半ば無理やりな様子で付き合わされるロゼリア……進化した今は確かロズレイドと言ったか、の姿が写る。
ああ、そうだ、そうだった。食堂で開かれた宴にはシンオウ各地の配下も招かれて必要以上に盛り上がり、俺は――はっとして自分の今置かれた状況を再度確認する。
後ろから、抱えるように俺の胴に回されている見覚えある茶色の腕、覗き込むミミロップの顔。
俺が座らされていたのは椅子などではなく、こやつの膝の上――
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