暴走堕天使エンジェルキャリアー


[51]リベリオン´


「朝霧!」
朝霧達が奪還した格納庫に長門と彩夏が辿り着く。
「班長!」
「ラファエル、すぐ出せる?」
「それが…」
朝霧が申し訳なさそうに目を伏せる。
「あ〜!!」
突然彩夏が大声をあげる。そこにいる全員が彩夏に向きかえると、彩夏はハンガーに向けて指をさしていた。
「ラファエル直ってないじゃない!!」
指をさす先には、先の戦闘で破壊されたままのラファエルがあった。そこに、またも申し訳なさそうな顔をした夕潮がやってきた。
「その…クーデターの準備でラファエルを直してる時間が…」
「だったらこんなとこ居るだけ無駄じゃない!士長が怪我したのよ!助けに行かなきゃ!」
「高良、担架とファーストエイド持ってきて!急ぐよ!」
彩夏達は急いで来た道を引き返す。

「はぁ…はぁ…」
彩夏の去った廊下で、春日は壁を背に息を荒げていた。数は減ったものの、未だ銃弾は春日を目掛け飛んでくる。
「やっべぇな、目が霞んできた…かっこつけなきゃよかったかな…」
脇に抱えた短機関銃の残弾はすでにゼロ。更に失血でその場から逃げることもできなかった。
そして弾切れを察知した敵が、ゆっくりと春日に向かい歩いてきた。
「終わりか。二尉の唇、柔らかかったなぁ…」
男は春日の傍に立ち、銃口をこめかみに押し当てる。
「晴紀っ!」
長門が拳銃を撃つ。男は短い悲鳴をあげてパタンと倒れる。
「士長、大丈夫!?」
「二尉…あー、これが走馬灯かぁ。」
「バカ!何言ってんの!」
春日は薄らと微笑むところんと床に倒れこむ。
「晴紀!高良、担架!」
高良は長門の指示で担架を広げ、慎重に春日を載せる。そしてファーストエイドボックスから包帯を取り出し、傷口に巻く。
しかし失血が酷く、春日の顔はみるみる青ざめていく。彩夏は傍で顔を歪め泣いている。
「とにかく医務室に、早く!」

その頃、小笠原が管制室に辿り着いていた。数人の元特務隊員がすでに占拠しており、不慣れではあるが、各々が管制を機能させようと必死になっていた。
「システムオンライン、管制機能回復しました!」
「わかった。先ずは特務隊員全員の位置の確認を。」
「了解。」
小笠原は頷き、インカムを耳に当てる。
「館内の全員に告げる。管制室は特務隊が奪還した。直に館内全域を奪還する。戦闘を止めて投降しろ。投降せし場合は生命の安全は保証する。」
小笠原の言葉に元特務隊員たちは笑顔を浮かべる。各所で行われていた小規模な戦闘は次第に収まり、自衛軍兵は次々に投降する。

「全館の戦闘の終了、確認しました。」
桐嶋が小笠原に向き返り報告する。小笠原はうん、と頷く。
そこに、医務室にいる長門から通信が入る。
「どうした?」
「晴紀が…春日士長が撃たれました。かなり…酷い状態です。」
小笠原の表情が曇る。そこに、春日部が声を掛ける。
「自分が行きます。医療の心得はありますから。」
「すまない。」
小笠原は再びインカムで長門に通信を入れる。
「そっちには今誰が居る?」
「自分と春日士長、水無月二尉、朝霧、夕潮准尉、高良二士です。」
「春日部一士がそっちへ向かう。長門准尉と水無月…いや、高良二士は管制室へ来てくれ。」
「了解しました。それと…」
「なんだ?」
「ドックにガブリエルがなかったんですが…」
「なに?」

ドゴン。

司令棟に振動と轟音が響き、電灯がチカチカと点滅する。
「まさか…桐嶋士長、モニターを開け!」
「は、はい!―本部直上に熱源二…映像出します!」
メインモニターに映された映像に、管制室の全員が絶句した。そこには、対峙する二機のエンジェルキャリアーが映し出されていた。

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