暴走堕天使エンジェルキャリアー


[43]音の教戒 中編


「あや、立てるか?」
「大丈夫よ…」
ラファエルがゆっくりと立ち上がる。その間にもBEASTの悲鳴は続いている。
「けど何よ、この金切り声は。きゃっ!」
ラファエルの足元に亀裂が入り、ラファエルは地下鉄幹線に崩れ落ちる。
「痛っ…」
「あや、何して…」
ガブリエルが手を伸ばした時、背後のウェポンビルが爆発する。そして次々に誘爆する。
「な、何が起きている?」
小笠原が叫ぶ。
「BEASTの発声に共鳴しています!」
「街ごと破壊する気か…!」
その時、BEASTの悲鳴が止む。
「今だ、あやっ!」
「オーライ!」
二機のエンジェルキャリアーが駆け出す。するとBEASTはジュニアを中心に集め、口を大きく開く。
「まずい、避けろ!」
小笠原が叫ぶが早いか、BEASTの口から悲鳴が発される。悲鳴は空間を歪ませながら、ガブリエルに直撃する。
ガブリエルを弾き飛ばしたBEASTは、悲鳴を発しながらその場で回転し、周囲のビル群を薙ぎ倒す。
「っあ!」
「つーくん!」
弾き飛ばされたガブリエルにラファエルが手を伸ばす。だがその手は届かず、ガブリエルは光波防御ビルを押し倒し崩れる。
「一尉!立てるか!?」
小笠原の呼びかけに応答はない。
「つーくん!」
その間にもBEASTはジュニアを引き連れ侵攻してくる。

「一尉、立て!!士長、一尉の状況は!?」
小笠原が叫ぶ。
「生体反応確認!ですが脳波が乱れています!」
小笠原は親指の爪を噛む。
「二尉、一尉のカバーを!」
ラファエルがガブリエルに駆け寄り、BEASTに向き返る。
「つーくん、起きて!」
やはり応答がない。
「春日士長、ガブリエルを18号ゲートから緊急回収!衛生兵を非常ドックで待機させろ!」
「しかし、ラファエル一機では…」
「一尉を失っても同じ結果だ!急げ!」
「は、はい!」
春日がキーボードを叩きながらインカムで衛生兵と連絡をとる。小笠原は俯き、誰にも聞こえないような声でつぶやく。
「しかし二尉だけでは…」

バン。

小笠原は机を叩く。小笠原の突然の行動に、管制室の全員が向き返る。
「なぜ私は彼らを傷つけることしかできんのだ…」
伏せた顔にはうっすらと涙が浮かんでいた。

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