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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[88]１月２５日(銀時)

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ソファーに寝そべって朝のワイドショーを見るのが、俺の日課だ。

こうして世の中の動きをウォッチングするところから一日が始まるのだ。

…しかし今日も結野アナ、カワイイなァ。

『今日の特集は、

【今どきのティーンの性を考える】

をお送りします。』

オイオイ、そんなガキの性なんて語ってないで、俺と大人の性を語りましょーよ、結野さん。

『それではこちらのＶＴＲをご覧下さい。』

俺の掛けた声が聞こえるはずもなく、結野アナは知らん顔でモニターを指差した。

画面には渋谷の派手なネェチャンやらニィチャンの映像が映し出されている。

顔にはプライバシー保護の為モザイクがかけられ、声も変えられてた。

そいつらはそれを良い事に、インタビュアーの質問に臆する事なく堂々と答えていく。

『初体験？中１ン時、彼氏ン家で。』

『別に好きとかじゃなくても、ナンパとかでノリが合ったら…みたいな？』

『愛し合ってるとかって言うより、気持ちいーからシタイ、的な。』

『初デートでフツーにするし。』

オイオイ、乱れてんなー、爛れてんなー、荒んでんなー、【ティーンの性】よォ。

最近のガキゃこんな性の意識しか持ってねェのかよ。

全く世も末だ、こりゃ。

…そういえば、うちにもティーンがいるじゃないか。

それも二人。

いや、信じてるよ、信じてる。奴らはそんな薄汚れた連中とは違うって。

だけど、純粋が故に…って事もあるだろ？

だからちょっとアイツらにレクチャーしとかないとな…。

・―・―・―・―・―・

｢え～…諸君にお集まり頂いたのは、他でもない。｣

｢何ですか、急に改まって。｣

｢なんかソワソワして気色悪いネ。｣

俺の向かいのソファーに腰掛けた神楽と新八は、純粋そのものの瞳で俺の顔を見つめている。

｢あ～、そのだな…オホンッ。

今日は【ティーンの性について】、な～んてお話ししてみようかな、なんて思っちゃっちやったりしている今日この頃ですが…皆さんいかがお過ごしでしょうか？｣

何言ってんだ、俺？

｢前置き、無駄に長いアルヨ。

笑点のオープニング並みに長いネ。｣

ニッチャニッチャと酢昆布をかじりながら、神楽が言い放つ。

【ティーンの性】という言葉に動揺する俺に対し、余裕の構えの神楽。

ちょっと俺ハート傷付けられたよ。ガラスのハートだからね、俺。

まぁ気を取り直して…

｢え～、まず君達、異性とはティーンらしい、清い交際をしているかな？｣

新八の歳＝彼女いない歴だという事は知っている。

この質問は、ハッキリ言って神楽に向けたものだ。

しかしこの場で奴一人に尋問するわけにはいくまい。

なので仕方無く同時に新八にも尋ねた。

｢僕は彼女なんていませんから。

でもお通ちゃんとお付き合い出来るとすれば、そりゃー僕は大事にしますよ、お通ちゃんの事！｣

｢アタシも総悟と清い交際してるアルヨ。

それなりに。｣

えっ、『それなりに。』…って!?

「オイ、どーいう事だよ、ソレ。

アイツと一体どんな付き合い方してんだよ。

言ってみろ、コノヤロー！｣

俺は思わず立ち上がり、身を乗り出した。

神楽は相変わらず酢昆布をニッチャニッチャしていたが、ニヤリと笑い、答えた。

｢『それなりに』っつったら『それなりに』アルネ。｣

ま、まさか…

まさかあーんな事や、こーんな事や、そーんな事までしてないよな？

いや、でも一応そこは追及しとかなくちゃな、保護者としては。

俺は震える唇で神楽に尋ねた。

｢神楽…

『それなりに』っていうのは、具体的にどこまでなんだ？

チューか？お触りか？それとも…

まさか子供が出来るようなマネしてねェよな!?

な？どうなんだ、神楽!?｣

すると神楽は空になった酢昆布の箱をゴミ箱に投げ入れ、ニヤニヤしながら言った。

｢子供って、どーやって作るアルか？｣

知っている！

コイツのこの顔は、｢知ってるけど、アンタが言ってみなよ｣の顔だ!!

完全に立場は逆転され、神楽上位になってしまっている。

クッソー、やりやがったな!!

翻弄される俺を見て、新しい箱を開けた神楽が笑みを浮かべている。

｢とっ…とにかくだ。

もうちょっとオトナになるまではだな、あまり深いお付き合いはせず、明るく正しく清潔な、若者らしい付き合い方で…｣

｢銀ちゃんと華蓮ちゃんは昔、同棲してたアルヨ。

それは清い交際だったアルか？｣

｢え、いや…あの…｣

うぉっ、墓穴掘っちまった！

そうだった。

俺と華蓮とはその昔、一年ばかり同棲をしていた時期があったんだった。

｢同じ屋根の下に住み、同じ布団で朝を迎える…

それでも清い交際だったアルか？｣

｢ううぅ…｣

そりゃー男女が同じ屋根の下に住み、同じ布団で朝を迎えれば、色々…ねェ。

神楽は勝ち誇った表情でまたニッチャニッチャ食っている。

｢あ、あのっ銀さん、質問です！｣

そこへ、ふいに新八が手を挙げた。

｢ハイ、じゃあ新八君。｣

当ててやると、新八はソファーから勢いよく立ち上がった。

｢あのっ、『ファースト・キスの味はレモン味だ』って聞いたんですけど、ホントなんですか!?

ちなみに銀さんはどんな味でしたか？｣

【レモン味】!?

んなわきゃねーだろ、バーカ。

ふしだらな妄想でいっぱいのティーンってのは、こんなくだらない事も鵜呑みにしちまうんだよな、ったく。

｢新八、【レモン味】なんてのはな、迷信、都市伝説なんだよ。

だって俺ん時は給食に出たカレーの味したもん。｣

｢今どき、まだそんな甘酸っぱい迷信を信じてる奴がいたアルか!?

ハン、これだからガキは…。

アタシなんかオトナの味、【酢昆布味】だったネ。｣

オイオイ、それって｢甘酸っぱい｣じゃなくて、ただの｢酸っぱい｣だろうが。

…てか、とりあえずチューはしてるって事か。

でも｢それ以上の事もしているのか？｣とも聞きづらいので、あえて追及しない事にした。

後日、神楽ではなく沖田の方にレクチャーしてやる方が良いだろう。

…だって神楽の口から聞きたくないもん。

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