第41章
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だが、あいつはてんで気に留める様子もなく、その糞ガキをひょいっと抱き上げ、背中に背負った。
「さ、これで気が済んだだろ? さっさとしねえと夜が明けちまうぜ」
あっしは急かすようにそう言ったが、あいつは、しっ、と口に指を当て、耳をピクリと動かした。
「ちょっと待ってくれ……今、話し声が聞こえた。あっちの方からだな」
あいつが指差した先にあったのは、「家電製品」と書かれた輸送用の小型コンテナだった。
勿論、そりゃただのカモフラージュで、実際はポケモン密輸の為に使われてんのは言うまでもねえ。
「ああ、そういや団員共が、ナントカってとこから珍しいポケモンが届く、とか言ってたなあ」
まだ到着したばかりなのか、その側面には船便のステッカーがベタベタと貼ってある。
「ふうん、シンオウ地方からか……随分と遠くまで商売の手を広げているようだね」
ステッカーを読みながら、そいつは皮肉めいた口調で呟いた。
「どこだそりゃ? てめえの知ってるとこか?」
恥ずかしながら、あっしは、そん時までシンオウという土地がある事すら知らなかった。
まさか、後々になって自分自身が行く羽目になるたあ、夢にだって思わねえ。
「いや、俺も行った事はないけど……軍隊にいた頃、仲間からそんな話を聞いた事があってね」
「ぐ、軍隊だぁ?!」
さすがのあっしも、これにゃあブッたまげた。と同時に、そいつに対する幾つかの疑問が晴れる気がした。
腹立たしい事だが、人間共のドンパチにポケモンが文字通り「生物兵器」として使われんのは良くある話だ。
人間共が争う限り、いくらでも需要はあったんで、当然、ロケット団もそんな戦争ビジネスに関わっていた。
軍隊で使役されるポケモンの状況は恐ろしく過酷で、たとえ訓練中でも死傷者が後を断たねえというからな。
……成程、そんな境遇を生き抜いてきた奴なら、その行動や目配りに抜かりがねえのも合点がいく。
「するってえと、てめえは……ひょっとして、脱走兵って奴か?」
「うーん、そんなところかな……まあ、その話は後だ。取り敢えず、これを開けないと」
あいつはしまった、とでも言いたげに顔をしかめたが、すぐに気を取り直してコンテナの正面に向かった。
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