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負けない!!負け犬【３】～私とＪｒ.と銀時と～《連載中》

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[35]５月３日(華蓮)

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銀時が、

「俺の親父だ」

と知らないおじさんを連れ帰ったのは三日前だった。

父親は銀時が産まれる前に亡くなっているはずだが、本人が｢親父だ｣と言い、寝泊まりさせるのだから、こっちとしては信じる他なかった。

しかし今日、本庁から屯所に一枚のＦＡＸが届いた。

そこには

【詐欺事件発生中】
身内のいない人を調べあげ、「身内だ」と嘘を偽り、金銭を奪い逃走するという手口で被害者多数

とあった。

足先から下腹部に向かい、寒気が私を襲った。

やはりあのおじさんは父親なんかじゃない！

一刻も早く銀時に…

いや、やはりそれは気が咎める。

この３日間、彼はおじさんと釣りに行ったり、金太郎の散歩に出掛けたり、お風呂で背中を流したりと、今まで出来なかった親子らしい事をやり尽くそうとしているかのように過ごしている。

以前、｢親父と晩酌を交わすのが夢だった｣と言っていたが、今まさにそれが現実となっている日々なのだ。

そんな無邪気にに笑う彼に辛い宣告をしなくてはならない私は、悪魔なのだろうか。

しかしこのまま黙っていては、うちの大事な生活費を丸々持ち逃げされてしまいかねない。

私は足早に屯所を後にした。

・―・―・―・―・―・

息を切らし自宅の玄関を開くと、銀時がうなだれて座り込んでいた。

真っ暗な廊下で明かりも点けずに。

あぁ、やはりやられたか…

彼の傷付き落ち込んだ姿を見ると、どう声を掛けてよいものやら皆目見当がつかない。

「銀時…」

名を呼び側にいる事が、私が今出来る事の全てだった。

銀時は目線を廊下の板目に落としたまま、語り始めた。

「知ってたんだよ、初めっから。

あのオッサンは親父なんかじゃねぇって。

だけどオッサン、俺に言ってくれたんだよ。

『今までよく頑張って生きてきたな。偉いぞ銀時』

ってさ。

そしたら俺、目頭熱くなっちまって…

気が付いたらオッサンの事、｢親父｣って呼んでた。

江戸で偽親子詐欺が流行ってんのも聞いてた。

でも信じたかったんだよ、あのオッサンを。

俺の頭を撫でて『偉いぞ』っつってくれたオッサンを。

だから試した。

オッサンが俺の親父である事を証明する為に、テーブルに三万円置いといた。

そしたらあのオッサン、金ごとあっという間にいなくなりやがってさ。

ほんっと、参ったよ。

なに、天国ってさ、詐欺まがいの事までしなくちゃなんないくらい金の要るとこなわけ？

だったら正直に言やぁいいのに。『天国で金が要りようなんだよ』ってよ。

そしたら多少の金ぐらい持ってってやるのによぉ…

あ、いっけね。

あの人、戦で死んでっから墓ねぇのにどうやって届けんだよ！

バッカだなぁ、俺。

アハハハ…

ほんっとバカ。」

力無く笑う彼の膝は、染み込んだ水分でびしょびしょになっている。

「お父さんが３日間３万円…

なかなかいい買い物したじゃないの。」

胸に引き寄せると、彼はせきを切ったように声を上げた。

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