†*†*†*†*†*†*†*†*

負けない!!負け犬【３】～私とＪｒ.と銀時と～《連載中》

†*†*†*†*†*†*†*†*

[34]４月２３日<新八)

†*†*†*†*†*†*†*†*

いつも元気な華蓮さんが、珍しく風邪をひいて寝込んだ。

一般的に、こういう時に家事や子供の世話を請け負うのは父親と相場は決まっているのだが、今日に限って銀さんは外せない仕事が入ってしまっている。

仕方ない。

卵かけご飯しか作れない神楽ちゃんに任せるよりは、僕が家の用事をする方が効率的だろう。

僕は白い割烹着に腕を通し、三角巾を巻いた。

・―・―・―・―・―・

まずは金太郎の離乳食を作ろう。

材料は何があるかな…リンゴとジャガイモか。

じゃあリンゴはお粥と一緒に煮てリンゴ粥にし、ジャガイモは粉ふき芋にして潰してあげよう。

金太郎は台所の床をハイハイしてはつかまり立ち、そしてまた床をハイハイ…を繰り返している。

「ちっぱー」

そう僕の名を呼びながら、金太郎が足元に纏わりつく。

「作業の邪魔！どいてどいて。」

そう叱りながらも、全然嫌じゃない僕がいる。

赤ん坊はかわいがってもらえるように出来ている、と聞いた事がある。

当然小さくて非力なので、誰かの世話にならなければ生きていけない。
その為には『かわいい』と思ってもらう事が必須だ。

だから赤ん坊というのは、顔のパーツの位置、仕草、肌触りなど、全て計算された『かわいい』の結晶なのだ。

しかし金太郎の見た目は正直『かわいい』とはいえない。

赤ん坊のクセに死んだ魚みたいな目だし、真っ白な天パだし。

だけども下から僕を見上げてニコリと笑いかけられると、不覚にも『かわいい』と頬が緩み、つい抱き上げてしまう。

「ほら、おいしいマンマ出来たよ。

お部屋でモグモグしようね。」

金太郎をベビーチェアに座らせ、防水エプロンをかけてやると、

「うきゃあっ。」

と歓声をあげた。

・―・―・―・―・―・

たらふく食べて眠くなった金太郎は、お昼寝を始めた。

初めは「ママの所で寝たい」と寝ぐずりして大変だったけど、抱っこしてあやしているうちに泣き疲れて、僕の腕の中でスヤスヤと眠りだした。

よし。今のうちに洗濯物を干しておこう。

金太郎が起きてる時だと、ベランダでハイハイやつかまり立ちするから危ないもんね。

僕は金太郎が起きないようにそっとサッシを開け、ベランダに出た。

カゴに山盛りになった洗濯物を一枚ずつ丁寧に伸ばし、タコアシに掛けていく。

金太郎の肌着は小さいので、タコアシ一本に２枚かけられる。

その隣に銀さんのランニングシャツを掛けると、その差は歴然。

「かわいいなぁ。ちっちゃいなぁ。」

気がつけば、金太郎の物を干す度に呟いていた。

銀さんはトランクス派。
いつもかぶいた服装をしているのでパンツも派手かと思いきや、意外や意外。無地やチェックやストライプなど、極めてシンプルなものばかりだ。

そういえばこの間、仕事中にお腹壊して「ちょっとチビッたかも…」って言ってたけど、パンツ汚して華蓮さんに叱られなかったかな。

あ、ヤバイ。
そうだった。

坂田家の洗濯物なんだから、当然華蓮さんの下着なんかも入ってるんだった。

女性用下着なんて姉上のを見慣れてるからどうって事ないはずなのに、やはりよその女性、しかも人妻の物となると軽い罪悪感に苛まれる。

僕はサッサと干してしまいたかったが、ブラジャーに関してはかなり気を使って干さないと型くずれを起こすので、丁寧に形を整えなければならない。

その時だった。僕は手に違和感を覚えた。

ブラジャーを裏返すとそこにはパットを入れるポケットがあるのだが、尋常ではない数のパットが差し込んであり、ポケットははちきれんばかりになっていた。

見てしまった…

華蓮さんの秘密兵器【極厚パット５枚入れ】。

僕もまだ命が惜しい。
この事は誰にも口外する事なく、骨壺まで持っていこう。

洗濯物を全て干し終えると、坂田家の生活模様が手に取るように分かった。

空に浮かぶ白い雲を眺めながら、僕は思った。

「市原悦子も、こうして派遣先の家族の秘密を知っちゃったんだろうな…」

,
†*†*†*†*†*†*†*†*
[前㌻] [次㌻] ［*］ﾎﾞﾀﾝで前㌻
［#］ﾎﾞﾀﾝで次㌻ †*†*†*†*†*†*†*†*
[←戻る] †*†*†*†*†*†*†*†*
†*†*†*†*†*†*†*†*