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負けない!!負け犬【３】～私とＪｒ.と銀時と～《連載中》

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[29]２月２０日(神楽)

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沖田の腕に絡まっていた女は、私に向かって無邪気な笑顔を向けた。

何アルか！？

ケンカ売ってるアルか！？

「アンタ程度の女にソウゴは渡さないわよ」

ってか！？

ジョーダンじゃないネ！

こんなクソガキにマイダーリンを奪われるような私じゃないアルよ。

かぶき町の女王を敵に回した事、たっぷり後悔するヨロシ！！

「お前、さっきから何ヘラヘラ笑ってるアルか。

このアタイをナメてたら痛い目見せんぞ、コラ！」

最初が肝心とばかりに、私は女にすごんで見せた。

すると沖田が、思いもよらない驚愕の一言を発した。

「コイツ、真由ってんだ。

お前と同い年。

田舎から出て来たばっかだから江戸を案内してやってくれ。

じゃあオレは仕事に戻りまさァ。」

それだけ言って、奴は屯所に帰って行った。

残されたのは私と女だけ。

ハアァァァ！？

何で私が会ったばかりの、しかもお前の浮気相手とお江戸観光！？

意味分かんねェよ！！

よし、こんな女放っといてさっさと帰ろっと。

「何か知らないけど、私はアンタの世話してやる程ヒマ人でもお人好しでもないアルよ。

勝手に一人で観光でも何でもしに行…」

私が背を向け帰ろうとすると、女が私の腕に絡み付いてきた。

さっき沖田にしてたみたいに。

そしてまたあの底無しの笑顔で言った。

「かぐちゃん、あそぼ！」

・―・―・―・―・―・

私はどんだけ良い人アルか。

結局この女を連れて、お江戸観光して歩くハメになった。

「かぐちゃん、ねェかぐちゃん！」

いちいちこの女の呼ぶ「かぐちゃん」が、耳について腹が立つ。

だいたい何アルか。

雷門に連れて行けば

「雷さーん！

私とかぐちゃんのおヘソはおいしくないから、取りに来ちゃ嫌よ～！」

とか叫ぶし、

大江戸ターミナルに連れて行けば

「空飛ぶお船がいっぱいねー。

あれに乗っておばあちゃんはお空に行ったよー。」

とかほざくし、

もんじゃ焼き食べさせたら

「さっき道端に落ちてたのと一緒ねー。」

とか暴言吐きやがる。

今流行りの天然不思議系少女のつもりだか何だか知らないけど、この空気の読めなさ加減には本ッッッ当に、心底イラつく。

どのタイミングで殴ってやろーかと考えては、

「いや、イカンイカン。大人になれ神楽！」

と自分を諫める事数百回。

そろそろ日も暮れて来たので帰ろうと、屯所の方へ向かい、歩き出した。

自然と大きな溜め息が口を突いて出る。

するとそんな私を見て、不思議女はまたあの笑顔で言った。

「かぐちゃん疲れた？

じゃあ真由のおうちでお休みしていいよ！」

女はすぐ目の前にある、カラフルな色使いの建物を指差した。

「えっ、おうちって…」

建物の玄関に掲げてある看板には、大きく

【知的障害者養護施設ひまわり園】

と書いてあった。

「ここ、真由んち！」

驚きと動揺を隠せないまま女に手を引かれ、私は施設内に連れて行かれた。

すると下駄箱の前に、仕事着姿の沖田が立っていた。

「遅かったですねィ。

どこほっつき歩いてたんでィ。」

「ソウちゃん、ただいまー！

あのね、あのね…」

また朝と同じように、真由は沖田の腕にまとわりついた。

沖田も笑顔で頷き、真由を愛おしそうに見つめている。

「…どういう事アルか。

説明するヨロシ。」

二人の世界に割って入るように、私は沖田に言い寄った。

すると奴はいつになく真面目に、落ち着いて話し始めた。

「真由は田舎の幼なじみなんでィ。

昔から俺を慕っていて、兄妹のように過ごしてきた。

コイツは両親を早くに無くし、婆さんに育てられていたんだが、その婆さんがこの間ポックリ逝っちまいやがって…

もう分かったろうけど、真由には知的障害がある。

だから一人で田舎暮らしなんて事は到底無理なんだ。

だから俺のそばで暮らさせる事にしたんでさァ。」

真由はもう室内に入り、興奮気味に施設の職員に土産話しをしている。

「真由は俺の[家族]だ。

だから[家族]になる女にも、アイツの事を理解して欲しかったんでさァ。」

真由は施設のお友達に、大声で言った。

「あそこにいるのが、あたしのかぐちゃんとソウちゃん！

とってもとっても大好きで、とってもとっても大事ー！！」

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