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《完結》負けない!!負け犬【１】～２０代後半・真選組女子隊長の日記～

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[29]４月１日

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本日付で真選組女子隊が正式に設置された。

狭き門を潜り抜けた精鋭２０名の女の子達は大半が未成年という幼いメンバーだが、皆自覚ある良い顔をしている。

真新しい隊服が早く馴染む様、厳しく指導していこう。

今日から十日間ばかりは普段の業務に加え、隊列の組み方、剣術等の修練を叩き込む予定なのだが…

｢華蓮さ～ん、今日は日差しが強いから、隊列練習はそろそろ終わってあげなよぅ。

ほら、女の子は暑さ・寒さに弱いし…｣

いや、局長。
あんた私を真冬の寒空の下、長時間立たせて警備させた事あったよな。

｢お、やっぱり女が煎れるのと野郎が煎れるのとじゃ、お茶の味が違うな。｣

いや、土方さん。
私、今まであんたにさんざんお茶煎れて来ましたが。

｢あぁ、やっぱり女の子がいると、屯所が華やかな雰囲気になりまさぁねぃ。｣

いや、総悟君。
半年くらい前から屯所に女の子、いたんですけど。

どいつもこいつも若くてかわいい女子隊士達に目ぇ眩ましやがって。

よーし、私も…

｢副長～、あの書類、高くて手が届きませぇ～ん。
取ってぇ～♪｣

｢甘えんな、気色悪い。
てめぇは身長１７０センチあんだから、余裕で取れるだろうが！！｣

私にも優しくしてよぉ～…。

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｢山田隊長、お電話です。｣

『山田隊長』…

なんかくすぐったい響き。

真選組に来てから、みんなから『華蓮さん』、『山田さん』としか呼ばれた事がなかったので、どうもこっ恥ずかしい。

今日は女子隊士を５つの班に分け、私と男子隊士それぞれに付いて市中見廻りをさせる事にした。

私の班には最年少のサツキ、頭脳派の京子、最年長の裕子、おっとりぽっちゃり型のルミ子が付いた。

かぶき町の歓楽街が私のテリトリーなので、一つ一つ丁寧に説明・指導しながら街を歩く。

珍しい女子隊士のお目見えに、街の方々は興味津々のようだ。

｢華蓮姐さん、そこに引っ付いてんの、あんたの子分かい？｣

出勤前の馴染みのホステスが私に声をかける。

｢子分じゃないよ。

大事な娘達だよ！

これからこの街で生きていくんだ。よろしく頼むよ！！｣

・―・―・―・―・―・

ここかぶき町は、昼と夜では１８０度顔つきを変える。

昼間は閑散とし、疲れたホステスやバーテンが多少うろつく程度だが、夜になると一転、暴力団・麻薬組織がはびこる悪の巣窟と化すのだ。

｢まだ入ったばかりの女子隊士に、かぶき町の夜は早いんじゃないか｣

という声もあるにはあったが、そんな甘い事を言っていたのではいつまで経っても隊士は成長しない。

私の責任の元に、昼間の四人を従えて見廻りに向かう。

｢華蓮ちゃん！！

ちょっと来て来て。

お客がまた喧嘩おっ始めちゃって大変なのよ！！｣

早速今日の仕事が舞い込んだ。

ヒラヒラ透け透けのキャミソールにヒモパンという姿で私達を呼び止めるランジェリーパブの女の子の強烈な出で立ちに、若い女子隊士達は驚いて固まってしまっている。

かぶき町を舐めてちゃいけない。
これくらいは序の口だ。

時にはソープ嬢が泡付けたままタオル一枚で出て来たり、おっぱいパブ、通称おっパブのお姉ちゃんが、はいてるんだかはいてないんだか分からないくらい小っちゃいパンツ一枚で助けを求めに来る事だってある。
酷い時にはニューハーフパブから勧誘された事も…。

｢真選組だ。

御用改めである。｣

ランパブの扉を勢い良く開け、奥に進む。

中ではガラのあまりよろしくない連中が暴れ回っていた。

かぶき町ではそう珍しい光景ではない。

しかし初めて目の当たりにする隊士隊はどうして良いか分からずオロオロするばかり。

それが当たり前の反応だろう。

だが隊士は隊士であって、ただの女の子ではない。それなりに育成せねばならない。

立ち尽くす彼女らに的確な指示を出す。

｢京子は屯所に電話連絡。
裕子は救急車を呼んで。

後の者は私が処理した後、間髪入れずに手錠を架ける。｣

裕子が首を傾げながら問う。

｢ケガ人はいないのに救急車を呼ぶんですか？｣

｢今からケガ人を出すからよ。｣

答えた瞬間、私は【百華】を振り下ろした……。

・―・―・―・―・―・

屯所に帰ってから、女子隊士達は一言も口をきかない。

どうやら歓楽街、人斬り、逮捕…と初めてだらけの仕事に、放心状態のようだ。

特に、私がチンピラ達を斬ったのがショックだったらしい。

暴れるチンピラ達を素手で抑えるには手間がかかりそうなので、移動手段を奪う為に脚を斬ったのだ。

もちろん命までは奪っていない。

｢今夜は女子隊長室で寝なさい。｣

今夜の彼女らを寮の個人部屋へ帰すのは可哀想だ。

こんな夜は私も一緒にこの広い部屋で眠ってやろう。

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