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負けない!!負け犬【３】～私とＪｒ.と銀時と～《連載中》

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[25]１月１７日(土方)

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近藤さんが、リサイクルショップでカーナビを買ってきた。

知らないメーカーの品で、値段は千円だったという。

「知ってる場所まで行くんだから、ナビは必要ない」

とさっきから何度も言ってるのに、近藤さんは聞く耳など持たず、イソイソとパトカーのダッシュボードにナビを取り付けている。

「よーし出来た！

これで安心だ。迷子にならなくて済むぞ、トシ！」

だーかーら、迷子になんかならねぇっつってんだろが！！

何で何万回も一人で行ってる署まで、わざわざナビ付けて行かなくちゃならねぇんだよ…全く。

「ランダムおしゃべりモードにしといたから。」

という近藤さんの声に見送られ、俺は返事代わりにエンジンを吹かした。

すると早速ナビが起動した。

♪ポーン♪

『おはようございます、ご主人様。

それではこれより、警察庁へご案内させていただきます！』

はァ！？
な…何だこの甘ったるい声は！？

[ご主人様]だと！？

驚いた俺は路肩に停車し、ナビの画面を覗き見た。

すると画面には【ランダムおしゃべりモード】と表示されていた。

あぁ、そういえばさっき出発する時に近藤さんが何かゴチャゴチャ言ってたな。

ランダムって事は、他にも色々訳分かんねぇのが出て来んのか？

やれやれ…

諦めの溜め息と同時にウィンカーを出し、路線に戻った。

♪ポーン♪

また始まった。何だ。

『ちょっとォ、アンタまさか直進する気じゃないわよね？

私の命令よ。あと３００メートル先を右折しなさい！

べ…別にアンタの為に言ってんじゃないんだからね。勘違いしないでよね！！』

オイオイ、ツンデレって奴か？

そりゃこーいうのを好きで嬉しくなるＭなユーザーもいるんだろうけど、俺はどっちかっつーとＳなんだよ。
上から目線でしゃべられると気分悪いわ！！

チッと舌打ちをし、胸ポケットからタバコを取り出した。

火をつけようとシガーソケットに手を伸ばすと、そこにはいつもの取っ手ではなく、ナビのコードが差し込んであった。

何なんだよ！？
俺をイライラさせる為の装置か、ナビってのは！！

♪ポーン♪

ハイハイ何ですか、今度は。

『えーっと…

僕の記憶が正しければ、次の信号を左折です。

…たぶん。』

おいコラ、自信持って道教えろよ。

ユーザーを不安に陥れて何が楽しいんだよ。

お前、道だけじゃなくて人生にも迷いが見受けられるぞ。

♪ポーン♪

あ～まただよ。いい加減、嫌気が差してくるな。

『あ、前の車にかわいい女の子発見～！

好みだったらドーンとアタックしとけ！！』

いやいや、ドーンとアタックしたら事故っちゃうからね、俺。

お巡りさんなのに事故っちゃうからね。

♪ポーン♪

『ニャー、ニャニャニャニャー』

で、どっちだよ！
ネコじゃナビ出来ねぇだろうがよ！！

♪ポーン♪

『野生のピカチュウが飛び出す恐れがあります。

注意して下さい。』

大丈夫大丈夫。

ピカチュウは大概森の中にしか現れないから。

♪ポーン♪

『次のハテナブロックでキノコをゲットしたら、土管に入って下さい。

目的地です。』

やったー！階段登って旗に飛び付いてお城にゴール！！

…って出来るかァァァ！！！

署に着いた時には、俺はグッタリ疲労していた。

たった１０分の道のりをこんなに長く感じた事は、おそらく後にも先にも今日だけだろう。

署の玄関をくぐると、大きなポスターが貼ってあった。

【運転中は集中しましょう】

ここに集中力を散漫にさせてるナビがありますけど、どうします？

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