†*†*†*†*†*†*†*†*

《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

†*†*†*†*†*†*†*†*

[22]１月２０日(華蓮)

†*†*†*†*†*†*†*†*

さて、お風呂も入ったし…

顔パックしながらマニキュア塗り直して、さっき録画した『音楽駅』見るぞー!!

今回は私の大好きなアイドルグループ・[過通運]が出演するから早く見たくて、今日一日ウズウズしてたんだから！

急いでＤＶＤをセットしてテレビ画面にかぶりつくと、タモさんの映像と一緒にいつものテーマソングが流れる。

キャア～始まる、始まる!!

今日は仕事で遅くなったからみんな先に寝ちゃってるし、一人で心置き無くはしゃげるぞ。

最近仕事で疲れてんだか知らないけど、お肌の荒れ方が尋常じゃない。

だからちょっと奮発して、死生堂の一番高いフェイスマスクを買って来た。

冷蔵庫から出したばかりのそれをペタリと顔に貼ると、ヒンヤリして毛穴が一気にキュッと引き締まる気がした。

っくうぅ～…効いてそう！

タモさんの横に、[過通運]のメンバーが並んで笑っている。

かわいいナァ～。

中でも白西君が好みだわ。
私よりもはるかに年下ながら、その美しさにウットリしちゃう。

どうやったらあんなにキレイな息子が出来るんだ。

やっぱ種か？種の問題か!?

おぉ、こうしちゃいられない。[過通運]の出番までにマニキュアを塗っておかなくちゃ。

知らないバンドの歌を聞き流しながら、爪の先が剥げかけたマニキュアを除光液で丁寧にこそぎ落とし、ベースコートを塗る。

速乾性なので、次の歌手が出て来た頃にはベースコートは乾いていた。

前回がピンク系だったので、今日はオレンジがかったパール系のマニキュアをのせてみよう。

♪～♪♪～…

あれ？携帯鳴ってる。

こんな夜遅くに誰だよ、チクショウ。

私の大切なお楽しみ時間を軽々しく奪ってんじゃないわよ！

ったく…

画面には【局長】とあった。

え～、まさか仕事!?

｢こんな夜更けにすまない、華蓮さん。

本庁からの緊急出動命令で、ターミナルに隊士を配備せよとの事だ。

どうやら央国星のバカ…いや、ハタ皇子の来日を聞き付けた攘夷志士達が、テロ予告をして来たらしい。｣

そのまさかかよ。

どうしよう。マニキュアまだ全部の指に塗ってないどころか、トップコートも塗ってない。

パックだってまだあと２０分はしとかないと…。

しかしどんな状況であれ隊長たるもの、命令に背く訳にはいかない。

私は急いで隊服に着替え、愛車２号のハーレーを飛ばした。

・―・―・―・―・―・

ターミナルには既に本庁からの応援、真選組は局長と副長以下、隊士達が集まっていた。

｢すいません、遅くなりました。｣

私はバイクから降り、フルフェイスのヘルメットを脱いだ。

その瞬間、みんなの顔が強張った。

あぁ、普段バッチリ化粧している姿しか見た事の無い隊士が多いから、スッピンに驚いているのか。

ところがそれは間違いだった。

｢華蓮、その顔は…

新しいオシャレなのか？｣

土方さんに問われ、自分の顔に触れてみた。

パックをしたまま来てしまっていた…。

それをペリペリと剥がすと、お陰様で肌はシットリしていた。

しかしアフターケアを今すぐ出来ないので、全く意味を成さない。

えぇ～ん、高いマスクだったのにィィ!!

私の後ろが、騒がしくなった。
するとピィーという本庁機動隊の笛の合図が聞こえた。

｢来たぞ、攘夷どもだ!!｣

声の方向を見ると、[天誅]と書かれたハチマキを巻いた連中・総勢百人程が刀を構え、こちらへ向かって走って来た。

コイツらのせいだ…

コイツらがこーやってここに来さえしなければ…

全てうまくいってたはずなんだ…

そう思うと、ハタ皇子の警護云々ではなく、個人的な感情から攘夷志士達を許せなくなった。

私は【百華】を手にし、上司の指令も聞かず飛び出した。

その後ろから、慌てて真選組のみんなも続いた。

いつもは血気盛んな攘夷志士どもも、スッピンの鬼の形相で駆けてくる私を見て、｢アレ女子隊長か？｣と戸惑っている。

｢その通り！

私が真選組女子隊長・坂田華蓮じゃあァァァーーー!!｣

彼らが困惑している隙を突き、愛刀を振り落ろした。

するとそれに触発されたのか、他の志士達が私目掛けてどんどん斬りかかってきた。

それを目の当たりにした私は、さっき以上の憎悪の念にかられた。

｢ざけんじゃねーぞ、バカヤロー！

せっかく楽しみにしてた【過通運】の録画、ゆっくり見れなかったじゃねーか!!｣

横一線に【百華】を引くと、一気に三人が倒れた。

｢マニキュアもパックもおかしな事になっちゃってんだろーが、このボケ!!｣

乾ききれずグチャグチャになったマニキュアに、鮮血が飛び散った。

｢だいたい今日のマニキュア、赤じゃねーんだよ！

パールのオレンジなんだよ!!｣

十文字に刀を払うと、相手の木製の赤胴ごと斬れた。

無我夢中で【百華】を振っているうちに、気が付けばターミナルには彼らの大将だけが残っていた。

｢見事だな、華蓮殿。

さすがかつて[白夜叉]と呼ばれた男の女房だ。｣

｢ヅラ…｣

今回のテロの首謀者は、やはりヤツだった。

｢ヅラじゃない、桂だ。｣

ヤツは丁寧に訂正した。

｢またしても君達幕府のイヌにはやられてしまったな。

しかし我々は諦めぬぞ、この国から全ての天人を叩き出すまではな!!

ゆくぞ、エリザベス。｣

ヅラ…いや、桂は、大きな宇宙生物を連れて窓から飛び降りた。

飛行する手段を調えていなかった私達は、歯ぎしりしながらそれを見送るしかなかった。

クッソ～！この腹立たしさ、どこにぶつけたらいいんだァァァ!!

怒り心頭で目を向けたところに、たまたま局長がいた。

私はツカツカと彼に歩み寄り、アゴヒゲを鷲掴みにして言った。

｢明日は有休!!

そんで今日の緊急出動手当は倍出せ!!

こっちは【過通運】とパックとマニキュア犠牲にしてんだからな!!

じゃないと、このアゴヒゲ引きちぎっぞ!!

分かったな!!｣

†*†*†*†*†*†*†*†*
[前㌻] [次㌻] ［*］ﾎﾞﾀﾝで前㌻
［#］ﾎﾞﾀﾝで次㌻ †*†*†*†*†*†*†*†*
[←戻る] †*†*†*†*†*†*†*†*
†*†*†*†*†*†*†*†*