第43章
[28]
そう癖毛のガキを制し、ぶかぶか帽子のガキは、すたすたとこちらへ歩み寄ってきた。
『おい、早く……』
『ちょっと待ってくれ。あの子が、俺達に挨拶したいそうだ』
早えとこずらかりたいあっしらを他所に、マフラー野郎はその場に踏み留まった。
『何言ってやんでえ。これ以上関わるとロクなこたぁねえぞ』
『そんなに時間は掛からないさ。それに……あの子なら大丈夫。眼を見れば分かる……』
マフラー野郎が逃げる様子を見せねえのを悟ったのか、ガキはにっこりと笑いながら近付き、
あっしらの前でぴたりと足を止めた。
「あの……助けてくれて、どうもありがとう」
そう言ってガキは帽子を脱ぎ、あっしらに向かって深々と頭を下げた。
「この事は一生忘れない……俺、大きくなったら、君達……ポケモン達に恩返しするよ!」
『そうか、そりゃあいいや』
マフラー野郎が笑いながら頷くと、ガキも大きく頷いた。
「そうさ、もし、ポケモン達がピンチになったら、今度は俺が助けに行くからさ。
たとえ俺一人でも……絶対に、悪い奴らからポケモン達を守る! 約束するよ!!」
『ああ、その気持ち……いつまでも忘れないでくれ』
無論、人間にポケモンの言葉なんか分かる筈はねえ。
だが、そん時、確かにあいつらは――
あいつとガキとは、言葉を越えた“何か”で通じ合っていた……そんな風に見えた。
「じゃあね、いつかまた会おう!」
ガキは帽子を被り直し、癖毛のガキの方へ走っていった。
「さあ、行こうか。早くしないとみんなが心配するよ」
「う、うん……」
去り際にガキはもう一度こちらを振り向き、大きく手を振った。
それを受けて、マフラー野郎も呑気に手を振り返しやがる。
そんな様子を見て、癖毛のガキもこちらへぺこんと頭を下げ、慌ててガキの後を付いて行った。
そしてようやく、二人のガキの姿は紅葉の中へ消えていった。
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