第25章
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木の実ジュースをぐいと飲み干し、自らを落ち着かせるようにカイリキーは大きく息を吐いた。
「――あたしは元々、野性のポケモンじゃないのよぉん。
昔――何年くらい前だったかしらぁ……たぶん、あんたの見た感じの若さだと、あんたは生まれる前だと思うわぁん――くらいに、外国で人間同士の戦争があったのよぉ、理由なんて興味無いし知らないわぁ。そこでポケモンも兵器として兵士達に飼われ、使われてたの。
あたしもそんなポケモンの一匹だった。あたしの飼い主の兵士は正に山男って感じのいいオトコだったわよぉ。は・つ・こ・い・の・人よ!」
自分の頬に手を当て、カイリキーは身をくねらせる。その気色悪さに背中の毛が少しぞわぞわと逆立つのを感じた。
「……話が脇にそれているぞ」
「あら、ごめんなさぁい。それで、そのピカチュウもそういうポケモンだったのよ。それもかなーり有名な――ねぇん。
冷酷で血も涙も無いような奴だという話だった。普通、いくら飼い主――トレーナーである兵士の命令だとはいえ、同族や子どもに危害を加えるのは少し躊躇するものよ? それを奴は平気に何のためらいもなくやってのけたそうよぉん。
そしてただのピカチュウだとは思えないその強さ。体格差が何倍もあるポケモンでさえ軽々と単独で倒すとか、一匹だけで戦況をがらりと変えるとか、放った雷で山が割れたとか、伝説の雷鳥、サンダーの化身だとか、他にも噂は色々……。
まあ、この手の話は尾ヒレが次々と付くものだから、かなーり大げさに伝わってるんでしょうけどねぇん。
とにかくヤバい奴だって噂。事実、ヤバかったわぁ……そんな奴が敵の方だったんだからん! 運悪く出会ってしまったのは、もう戦争も終決しかけ。こっちの負けほぼ確実の時よ。
心身ともに疲弊して、飼い主の兵士と一緒に退却してる途中だった……。あたし達はとりあえず森の中に逃げ込み、身を隠そうととしたのよぉ。
もう少しでたどり着くという時、突然、森の奧の方に雷が落ちたの。その雷のせいで火災が起きて、どんどん木々に燃え広がっていったんだと思うわぁん。それはもう森は大火事よ。
そして、奴は燃える森の奥から、ゆっくりと姿を現した――」
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